「Skype au」は企業へのスカイプ普及のトリガーとなるか?

昨年11月にKDDIが投入したSkype auは、使い勝手と通話品質を向上させ、モバイル環境での実用的なSkype利用を実現したもの。企業のSkype導入のトリガーとなる可能性もある。

“禁断のアプリ”と銘打って、KDDIが昨年11月に提供を開始した「Skype au」。文字通り、これは、インターネット電話の代名詞的な存在である「Skype」をauのAndroidスマートフォンから利用できるようにするものだ。

ルクセンブルグに本社を置くスカイプ・テクノロジー(以下スカイプ)が展開するSkypeは、専用ソフトを導入したPC同士でインターネットを介して通話やチャットができるサービスである。ソフトは無料で、PC同士の通話であれば、相手が世界のどこにいても通話料は掛からない。

これに加えて、PCから国内外の固定/携帯電話にも、安価な料金(プリペイドの場合、米国本土あての3分間の通話で18円程、国内あては固定電話向けが3分間で18円、携帯電話向けが同60円程)で電話をかけられる「Skype Out」と呼ばれるメニューも提供されており、これもSkypeの大きな魅力となっている。2010年末時点での、Skypeの登録ユーザー(ID)数は6億6000万、うち、実際にサービスを利用しているアクティブユーザーは月平均1億4500万人に及ぶという。

電話会社にとってSkypeは本来、自らの通話料収入を浸食する競合サービスだ。“禁断の“という言葉には、KDDIがあえてそのライバルと組み、新たなサービスに乗り出すといった意味も込められている。

回線交換で通話品質を確保

スマートフォンでのSkype利用はすでに、au以外の端末でも可能となっている。スカイプがiPhoneやAndroid端末向けに対応アプリを提供しているのだ。このアプリは、単に携帯電話のパケット通信網を介してインターネット上のPCなどと通信を行うものである。

これに対して「Skype au」は、KDDIとスカイプが共同で展開するサービスで、アプリも専用のものが用意され、KDDIのネットワークにも新たな作り込みが行われている。

その最大の特徴が、音声通信に「電話」の設備を使っていること。Skype通話時の端末とインターネット間のアクセスに、パケット通信網ではなく回線交換網が用いられているのだ。

Skype auのアプリでも、Skypeのサーバーとの認証やチャットなどはパケット通信網を経由して行われる。だが音声通信は、携帯電話の通話と同じ仕組みでKDDIがSkype用に設けたVoIPゲートウェイに接続され、ここでIP電話に変換されてインターネット上のPC等と通信する形が採用されている。Skype au端末同士の通話は回線交換網に閉じた形で行われる(図表1)。

図表1 Skype auの接続形態(対PC、auスマートフォン)
図表1 Skype auの接続形態(対PC、auスマートフォン)

パケット通信網ではネットワーク、特に無線区間の混雑によってデータ伝送速度が変化し、遅延が発生する。通常のSkypeアプリでの通話品質はこれに左右され、音声の途切れが起こる。夕刻の繁華街等では実用にならないケースが少なくない。

Skype auは回線交換網を利用することで、これを解消しているのだ。

加えて、もう1つSkype auには大きな特長がある。アプリをauのネットワークに最適化させることで消費電力を抑え、一般のSkypeアプリでは難しいスマートフォンへの常駐を可能にしたことだ。これにより、携帯電話と同様に「待ち受け」ができる実用的なサービスが実現した。

月刊テレコミュニケーション2011年4月号から一部再編集のうえ転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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