「Skype au」は企業へのスカイプ普及のトリガーとなるか?

昨年11月にKDDIが投入したSkype auは、使い勝手と通話品質を向上させ、モバイル環境での実用的なSkype利用を実現したもの。企業のSkype導入のトリガーとなる可能性もある。

顧客拡大で利害が一致

実は、このサービスはスカイプの世界戦略の一環でもある。同社はすでに2007年に英3UKと、2010年には米ベライゾン・ワイヤレスと組んで、同様の回線交換ベースのSkypeサービスをスタートさせているのだ。

グーグルやヤフーなどが類似の音声統合型メッセージングサービスを導入する中で、ユーザーの拡大を図るべくスカイプが力を入れているのがモバイルへの展開だ。キャリアと組んで展開する高品質サービスは、その切り札といえる。

他方、KDDIがSkype auを提供する理由は、競争力のある新サービスの提供によるスマートフォンの拡販、新規ユーザーの獲得にある。将来Skypeの利用が増え、音声ARPUが低下したとしても、新たなユーザーの獲得でそれを埋め合わせられると見るのだ。顧客基盤の拡大という点では、双方の利害は一致する。

回線交換でのサービスであるため、通常の電話と同様のコストがかかると考えられるが、KDDIはこのサービスを当面無料で提供する考えだ(2011年11月末までの料金)。

さらに、KDDIとスカイプの“禁断の関係”が成立したもう1つの理由に、このサービス展開で両社の棲み分けが図られていることが挙げられる。

Skype auアプリに国内の固定/携帯電話番号が入力されると、au携帯電話に発信される仕組みとなっており、SkypeOutは海外への通話でしか使えないのだ(図表2)。

図表2 Skype auの接続形態(対固定/携帯電話)
図表2 Skype auの接続形態(対固定/携帯電話)

すなわちSkypeOutの利用の大半を占める国際電話の収益はスカイプが、auの屋台骨である国内通話の収益はKDDIが確保する形で共存が図られているのである。

Skypeの利便性を持ち運ぶ

では、このサービスは、今後どのような形で普及していくのだろうか。

KDDIでSkype auのサービスを所管するネットワークサービス企画部・課長の八木橋裕氏は「我々の調査では、Skypeのユーザーには大学生などの若年層が非常に多いという結果が出ている。こうした層にぜひ外出先でも使ってもらいたい。そこで、1月末からのCMでは嵐を起用して利用シーンを訴求している」と、新たなユーザーの開拓に期待をかける。

この一方で、恐らくコンシューマー層よりも立ち上がりが早いと見られるのがビジネスユースだ。

特に海外と連絡をとることが多い商社や、日本に進出している外国企業にとっては携帯電話発の国際電話料金を劇的に下げられるSkype auの登場は福音となるはずだ。

もう1つ期待されるのが、社内のコミュニケーション手段としてSkypeを活用する企業での導入だ。

Skypeの最新版では電話会議やビデオ会議、ファイル転送などの機能がサポートされており、海外では中小企業がユニファイドコミュニケーションの代替として導入するケースも珍しくないという。日本ではセキュリティ面での懸念から導入に二の足を踏む企業も少なくないが、統合管理ツールなどの登場で、ハードルはかなり低くなってきている。

モバイル環境でも一定の通話品質と操作性を確保できるSkype auの登場が、企業のSkype導入を本格化させるトリガーになる可能性もある。

月刊テレコミュニケーション2011年4月号から一部再編集のうえ転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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