「光レイヤの暗号化は日本ではまだ認知度がない。しかし、欧米などではRFP(提案依頼書)にも記載されるようになっています」と話すのはリボン・コミュニケーションズ IP Optical Networks部 部長の宮下泰彦氏だ。
リボン・コミュニケーションズ IP Optical Networks部 部長 宮下泰彦氏
様々な社会インフラが通信ネットワークにつながることが当たり前になった今。通信は基本的に暗号化とセットで運用されており、例えばWi-Fiでは「WPA3」などで通信を暗号化するなど、アクセス部分の暗号化も必須になっている。
ところが、国内企業の多くが気づいていないポイントがある。それがレイヤ1ファイバの暗号化だ。実は防御措置のなされていない光ファイバネットワークは、容易に盗聴されてしまうことが分かっている。
「光ファイバから漏れ出てくる光をわずかに窃取するだけで、簡単にデータを複製しデータを盗むことができます」と宮下氏は説明する。
高度な技術や装置は不要。大手オンラインストアで数10ドル程度で購入できる光ファイバ用タップがあれば光信号は窃取可能だ。具体的な手順を解説した動画もインターネット上で公開されている。
英国のスパイ機関であるGCHQは、世界中の通信網に光ファイバ用タップを設置し、電話の音声、電子メール、Facebookへの書き込み、Webサイトのアクセス履歴などを窃取していたと過去にエドワード・スノーデンは告発している。
こうした攻撃への対策として有効であるのが、WDM伝送装置やOTNスイッチなど光伝送装置でのレイヤ1暗号化である(図表1)。通信キャリアやデータセンター事業者、軍事・行政、鉄道・電力をはじめとする重要インフラ企業などで未導入であれば、ぜひ導入を検討すべきだ。
図表1 レイヤ1暗号化ネットワークのイメージ