【ガートナー田崎氏に聞く!(後編)】クラウド時代の企業ネットワーク構築の落とし穴とは?

ユーザー企業は、スマートフォン/タブレット、クラウド、ビデオなどICTの新潮流に、どう戦略的に取り組んでいけばいいのか。ガートナー ジャパン バイス プレジデントの田崎堅志氏に全2回にわたり聞く。後編は、これからのコミュニケーションインフラとネットワークインフラの在り方がテーマだ。

これからの企業ネットワークはクラウド時代の“二面性”に注意

――ネットワーク設計の面で、注目すべきトピックはありますか。

田崎 IP-VPNと広域イーサネットの登場以降、技術的な変化があまりない時期が続きましたが、一昨年にKDDIが開始した「KDDI Wide Area Virtual Switch」を皮切りに、一工夫を加えたWANサービスが出てきています。こうした変化を受けて、ネットワーク全体を見直す動きがユーザー企業の間で増えていますね。

――いわゆるクラウド化の進展も、ネットワーク見直しの1つの背景になっていると思いますが。

田崎 そうですね。外部のデータセンターを利用するケースが多くなっていますので、データセンターへのアクセス部分を見直す企業も増えています。

また、インターネットへのゲートウェイ部分に対する考え方にも変化が見られます。従来ですと、インターネットとの接続ポイントは1箇所というのが企業ネットワークの定石でしたが、1箇所だけでは急増するトラフィックに対応できなくなってきているためです。このあたりのネットワーク設計の考え方については、ここ2~3年で急速に変わってくると見ています。

――クラウド時代に対応するための変革が企業ネットワークには求められているのですね。

田崎 実はそこは難しいところなのです。業務アプリケーションを中心に考えると確かにセンターに集約されていくのですが、企業ネットワークを流れるトラフィックにはVoIPやテレビ会議などもあります。こうしたトラフィックは、SIPサーバーなどがコネクション張った後は、エンド・ツー・エンドでやりとりされます。VoIPやテレビ会議のトラフィックは、拠点-拠点間のP2Pなのですね。

――なるほど。ビデオトラフィックの増大は今後、企業においても確実に増大していきますから、クラウド時代だからといって拠点間をつなぐネットワークを軽視していると、思わぬ落とし穴に陥る可能性がありますね。

田崎 ええ、これからの企業ネットワークは、この“二面性”に対して注意していく必要があるのです。

田崎堅志(たざき・けんし)氏

ガートナー ジャパン リサーチ部門 テクノロジ&サービス・プロバイダー バイス プレジデント

1991年よりデータクエスト ジャパン (現ガートナー ジャパン) にてデータ・ネットワーキングやボイス・コミュニケーション、パブリック・ネットワーク、モバイル・コミュニケーション、通信事業者のデータセンター・ビジネスなど、テレコミュニケーション産業全般にわたる動向分析ならびにマーケティング・コンサルティングに従事。
ガートナー ジャパン入社以前は、富士通にて通信処理マルチマイクロプロセッサ、ネットワーク・アーキテクチャ、高速パケット通信システムの研究開発、ネットワーク・システムおよびネットワーク・ソフトウェア製品の企画開発、プロジェクト・マネジメントを担当。高速光LAN、TDM、ネットワーク・サービス・プロセッサなど企業向け通信システム製品のハードウェアおよびソフトウェアを商品化。
IEEE Communications SocietyおよびComputer Society会員。電子工学修士。上智大学卒。

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