5.7GHz帯で高電力ワイヤレス給電 京大発スタートアップが新技術

スペースパワーテクノロジーズの「POWER GATE」は、5.7GHz帯を使用するワイヤレス給電システム。独自技術により、920MHz帯と比べて約1000倍の高電力で給電することができる。

24GHz帯で屋外でも安全に給電

2024年頃に予定される制度化の第2ステップでは、対象が屋内だけでなく屋外に拡大するとともに、有人環境での利用が進むと考えられる。

スペースパワーテクノロジーズでは、屋内外の有人環境向け送受電器についても研究開発を進めている。ただ、5.7GHz帯は屋外ではETC(電子料金収受システム)やドローン、アマチュア無線に使用されている。5.7GHz帯は、920MHz帯ほどではないとはいえ「送電器から放射された電波の多くは受電器以外の場所に飛んで行くので、この不要な漏洩電波の低減と伝送効率の向上に向け、送信周波数の高周波化による鋭い指向性の実現が求められる」と古川氏は説明する。

このため、有人環境には準ミリ波の24GHz帯の利用を検討している。

24GHz帯は、5.7GHz帯と比べて直進性が高く、電波が拡散しないことから、受電器に向けてより細いビーム状に電波を放射することが可能だ。また、同じ帯域で干渉するシステムも少ない。総務省でも「戦略的情報通信研究開発推進事業(SCOPE)」の2021年度の研究開発課題の1つに、スペースパワーテクノロジーズの24GHz帯を使った高出力鋭角ビームの送信技術を採択したほか、2022年度から新たに実施する電波資源拡大のための研究開発の基本計画書の1項目に24GHz帯を活用した電力伝送効率化技術を盛り込むなど、検討を進めている。

古川氏によると、第2ステップにおける24GHz帯利用の規制緩和は2024年頃を目標にしているという。

第2ステップでは、画像認識技術を応用し、近くに人間がいることを検知すると給電を止める仕組みにより、バス停や郵便ポスト、マンホールなど「これまで電源から切り離されていた屋外のオフグリッドへの給電を考えている」と古川氏は述べる。例えばバス停については、待ち時間中の充電スポットとしての活用を想定している(図表3)。

図表3 第2ステップで見込まれる利用シーン

図表3 第2ステップで見込まれる利用シーン

また、オフィスやカフェなどの屋内環境では、ノートPCやスマートフォンへの給電が可能となる。このほか、送電アンテナをさらに小型化することで、可搬型ワイヤレス給電装置も開発したい考えだ。

2025年に開催される大阪・関西万博では、24GHz帯を使って移動体等から来場者のスマホなどに充電する構想を掲げており、その実現に向けた取り組みも始まっている。

必要なときに、必要な場所でIoT機器を使える──。近い将来、そうした社会が現実となりそうだ。

(月刊テレコミュニケーション2022年10月号より転載)

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