「オープンインターネット」を巡る攻防[前篇]~難局打開の突破口はあるか?

米国が今、インターネットのオープン性を巡り激しく揺れている。ネットワーク中立性原則の法制化を目指すオバマ大統領・FCC、それに対抗する通信事業者・共和党との攻防を全2回でレポートする。

「インターネットにおけるオープンな競争の利益を確保」する「ネットワーク中立性」の原則への支持を明言してきたオバマ大統領。

これは、ネットワークにおいてオープンなコンテント、アプリケーション、サービスの流通、端末の接続などを確保するという考え方であり、インターネットの利用者であるエンドユーザーに向けた政策であると同時に、ネットワーク上でコンテントやアプリケーション、サービス等を展開する事業者への福音と受け止められた。これら事業者にとっては、ネットワーク提供事業者によってネットワークから締め出されることがあっては、その存在自体が危うくなるからだ。したがって、これを大統領選挙の公約として最初に表明する場所としてオバマ氏がシリコンバレーのグーグル本社を選んだことには、象徴的な意味合いがあった。

他方で、「オープン」にさせられることになるネットワークを提供するベル系事業者やケーブル事業者は、「オープン」性のコンセプト自体には賛同しても、そのために新たな規制を設ける必然性があるのかと、強い警戒感を持って問いかけた。政府の規制を限定的に捉える共和党関係者も、これに呼応して、強く反発してきた。

オバマ大統領の支持者が進めてきたのは、ネットワーク中立性の原則を法制上確立させようということなので、その是非を巡る論争は、法的原則の有り様を巡る争いである。したがって、立法府である連邦議会と米国通信法制執行において大きな裁量を持つ連邦通信委員会(FCC)の判断を巡る政治的に激しい争いとなり、党派対立の焦点となった。

今回と次回、2回にわたり、この議論の経過を追い、今、米国でインターネットのオープン性について、何が焦点となっており、それがどういう政治環境の中でいかなるルールが模索されているのかをレポートする。

月刊テレコミュニケーション2011年1月号から一部再編集のうえ転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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藤野 克(ふじの・まさる)

1990年郵政省(現総務省)入省。93年シカゴ大学社会科学修士号(MA)取得。総務省では、料金サービス課課長補佐(接続政策担当)、電気通信事業紛争処理委員会事務局上席調査専門官、通信政策課企画官(電波法改正担当)等を歴任。2006年早稲田大学非常勤講師。08年より現職。著書に『電気通信事業法逐条解説』(08年共編著)がある

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