その2:社内宣伝はなし、招待制&自己申告制
社内システムである以上、社員が等しく利用できる環境に置きながらも、Nextiはあえて招待制を採用しています。
Nextiに参加するには、既に参加している社員からの招待を必要とし、登録当初から必ず仲間リストに1人以上の友人がいる状態を作るようにしました。その理由は「発信」「気づき」「つながり」というNextiの3つの目的のうち、「つながり」を具現化するためです。つまり、社員が元々持つコネクションを基点としながら、新たなコネクションを広げてほしいという思いからです。
ただし、職場環境などの理由から、Nextiに参加している友人・知人が近辺にいない社員を排除しないよう、運営メンバー宛に連絡すれば、その誰かが本人を招待するという自己申告制を併用しています。また、Nextiのオープンの前も後も、リスペクターズは社内宣伝活動を一切実施していません。この点も社内システムとしては異例です。
一般に、全社員を対象とした社内システムでは、運営者側が全社員のアカウントを用意した上で、各ラインを通じ「期日までに各自がプロフィール項目の入力を完了するように」といった指示を出すケースが多くあります。しかし、そもそも関心のない社員や、既に豊富な社内人脈を有していて、社内SNSを必要としない社員もいます。そうした社員にまで利用を強制したところで、「幽霊アカウント」が多数できてしまうだけです。またSNSの特性上、アクティブでないアカウントが増えると、“場”としての賑わい感の低下が懸念されます。まずは「社内SNSの目的に共感し、必要性を感じる社員に使ってもらおう。そこから全社の平均値を徐々に高めていこう」と大胆に割り切ったのです。
参加者によるクチコミという普及方法により、「ちょっと敷居の高い」仕組みとしました。にもかかわらず、オープン初日の登録者数は500名、4日で2,000名、1ヶ月で3,000名。早い段階から多数の社員が興味を示し、「使ってみよう」と思ったのは、宣伝を控えた招待制が“プレミア感”を醸成した面もあったかもしれません。
実際、経営幹部のブログや社内報、外部媒体などを通じてNextiの存在を知った社員も多いようです。運営者側の声高な宣伝活動よりも、特に周囲の声や社外の評価などに社員は敏感に反応します。こうした点も社内SNSならではの特性と言えるかもしれません。
その3:親しみやすい色調・デザイン・表現
Nextiの色調やデザインも、社内システムにしては異色のフレンドリーな雰囲気となっています。
例えば、NTTデータのコーポレートカラーは白と青であり、先進性・知性・信頼感を想起させる寒色系。対してNextiの色調は、オレンジを基調とする暖色系。人と人のつながり感や温かみをイメージさせ、元気が湧くようにとの思いからです。また、既存のシステムのイメージに対するチャレンジでもあります。
社員からは、「社内で派手な色のサイトを開いていると目立つ」「インパクトがある」という声も聞かれます。それでも、あえてNextiを使おうと思うかどうか。これも既存の仕組みに対するちょっとした踏み絵となっているのです。また、画像が登録されていない時の初期表示画像(No Photo画像)は、ベンダーの初期設定画像をカスタマイズしました。ヒヨコが「画像アップしてね」と吹き出しで喋る画像が表示されます(図3-11参照)。
図3-11 No Photo画像のイメージ |
これは親しみやすさを狙っただけでなく、運営者のスタンスを表したものでもあるのです。画像が設定されていると画面が賑やかになり、SNSが活性化して見えます。雰囲気作りにおいて、画像掲載は重要な要素です。かと言って、運営者が小うるさく「画像を掲載してください」と要請しては、社員の自発的な利用という精神から外れます。そこで、キャラクターに喋らせる形で画像掲載を誘導することにしました。
文章表現にも留意しています。事務的、高圧的な表現を用いず、口語調に近い柔らかな文体を心掛けるなど、些細な箇所に気を配ることが雰囲気の醸成で大きなポイントとなっています。