3.2.3 メンバーがデモサイトでパッケージ候補の使い勝手を最終チェック
機能充足度や動作実績、コスト、納期の4つの指標軸で比較検討した結果、SNSパッケージは2製品にまで絞り込まれました。そして最終的な決定のために、構築目的である「社内コミュニケーションの活性化」との合致度、エンジンの信頼性、レスポンス性能、デザイン/操作性、カスタマイズ対応可否の評価軸を追加しました。
検討に際しては、最終選考に残った2社にデモサイトを立ち上げてもらい、WGメンバーが実際にサービスを利用。各パッケージのデザインや操作性、特徴を理解し、実現イメージに合致しているかどうか、レスポンス以外の機能や使い勝手を確認しました。カスタマイズにはどちらの製品も対応しており、それぞれのパッケージを使ってシステムを構築した場合の、機能面の優劣はほとんどありませんでした。
レスポンス性能については、ベンダー情報やデモサイトの使用感などで評価しました。性能面で特に注意したのがピーク時のレスポンスです。業務に支障のない昼休みや定時退社時間前後にアクセスが集中すると予想されたからです。なお、立ち上げ後に調査してみると予想通り、特定の時間帯に利用が偏っていることが分かります(図3-7参照)。
図表3-7 時間帯別アクセス数 |
結局、「1万人規模での負荷試験を唯一実施していた」ことが決め手となり、Beat Communication社のSNSパッケージを選択しました。その後、間髪入れずにカスタマイズを含めた実装機能の検討に着手しました。
標準機能で対応していない要件は、実装するか否かをWGで吟味して決め、ベンダーにカスタマイズを依頼しました。同社のSNSパッケージの場合、基本機能以外の便利機能やカスタマイズ項目は様々ですが、Nextiでは、いたずらに機能の多さを追い求めることはしませんでした。限られた期間と予算を考慮しながら優先度を決め、「シングルサインオン対応」「実名制対応」「プロフィール項目追加」「デザインの一部変更」の4つだけを取り込むことにしました。以下、その内容を簡単に説明します。
シングルサインオン対応
一般的なSNSサイトでは、メールIDと専用パスワードを入力してログインすることが多いのですが、Nextiでは他の社内システムと同じID/パスワードでログインできるようにカスタマイズしました。
NTTデータでは既に、人事情報と連動した社内システム基盤を整備し、共通認証サーバーで一度認証を受けると、個別システムでID/パスワードを入力することなくログインできるシングルサインオン機能を提供していました。それとNextiを連動させたのです。これで、個別ログインの手間をなくしてユーザーの利便性向上を図るとともに、運営者のID/パスワード管理も不要にできました。加えて、認証サーバーの情報を利用するため、名前やメールアドレスを正確に登録できる、Nextiで認証情報を保持することなくセキュアな認証環境を実現できる、といった効果も得られました。
実名制対応
コンシューマー向けSNSの場合、一般的にユーザーは実名をプロフィール登録せず、「ニックネーム」で利用していますが、Nextiではニックネームを排除して完全実名制としました。新規参加者の氏名情報は、前述のシングルサインオン時に取得される情報に含まれていますので、その氏名情報をSNSパッケージ側で自動登録するようにしています。
もちろん、「ニックネームも使えるようにした方が日記やコミュニティでの自由な発言が増えるのではないか」との意見もありました。しかし、「社員一人ひとりが組織を越えて主体的に協力し、助け合う社風作り」というNexti導入の目的に立ち返り、「人となりを知り合う」ためには発言者を明らかにし、本人に発言責任を意識してもらうことが重要だと考え、最終的に完全実名制にしました。
サービス開始前は、社員からの抵抗感や書き込み抑制などの悪影響が少々懸念されましたが、ふたを開けてみると、社員には概ね違和感なく受け入れられたようです。さらに、実名制としたことで「業務時間中の使い過ぎ」「荒らしなどの書き込み」を抑制する効果もありました。
プロフィール項目追加
一般的なSNSでは、プロフィール登録時に氏名の他に生年月日や自己紹介を入力します。Nextiではさらに独自項目を追加し、自己紹介欄とは別に「ONの私(略歴、得意分野、詳しい業界、社外の人脈など)」と「OFFの私(趣味、休日の過ごし方など)」という項目を用意しました(図3-8参照)。より「人となり」を表現できるように、という工夫です。
図表3-8 プロフィール欄のイメージ |
一方、パッケージ標準のプロフィールには「役職」の項目がありましたが、Nextiでは削除しました。全ユーザーがフラットかつ1対1でつながる構造を目指すNextiにおいては、役職や年齢もセクショナリズムを持ち込む要因になり得ると考えたためです。
なお、プロフィールは「氏名」「部署名」のように全開示のものと、「生年月日」「入社年度」など開示範囲が選択できるものに分けています。その開示範囲も「全員に公開」「仲間まで公開」「開示しない」の3段階から選択できるようにしています。
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