企業ネットワーク最前線

KDDIが月とのギガ級通信に挑戦 アポロ11号から50年、月との通信計画

文◎松本一郎(編集部) 2022.06.17

  • Teitter
  • facebook
  • 印刷

国際的に活発化している宇宙開発。世界が頭を悩ませているのが、宇宙と地球の通信である。日本でも月と宇宙を結ぶネットワークの検討が始まっており、KDDIがアーキテクチャ策定に乗り出した。

 
アポロ11号のニール・アームストロング船長が人類史上初めて月に降り立ったのは1969年のこと。それから50年以上が経過した今、ギリシャ神話のアポロ(アポロン)の双子の妹の名を冠した「アルテミス計画」が進行中だ。

アルテミス計画は、米国およびNASAが主導する国際的な宇宙探査計画。アポロ計画以来の有人月面着陸を2025年に実現することもスコープに含まれている。日本もアルテミス計画に参加しており、日本人宇宙飛行士による初の月面着陸への期待もふくらんでいる。

このように50年以上ぶりに人類が月へ足を踏み入れようとしているなか、月面活動用のインフラ構築に挑み始めた日本の通信事業者がいる。KDDIだ。超小型衛星を開発するベンチャー企業のアークエッジ・スペース等とともに、JAXAの公募型企画競争「『月面活動に向けた測位・通信技術開発』に関する検討」の委託先に選定された。このプロジェクトは、政府が取り組む「宇宙開発利用加速化戦略プログラム(スターダストプログラム)の戦略的プロジェクトに位置付けられている(図表1)。

 

図表1 スターダストプログラムのスキーム概要


月面には「ほとんど何もない」 同プロジェクトでは、月-地球間の長距離通信システムと月測位衛星システムの2つの技術開発を5年かけて検討する。

無人探査機が降り立ち、活動することはあったが、これまでの月面での活動は極めて限られたものだった。そのため、インフラと呼べるような恒久的な設備も現状、「地球と月の間および月面にはほとんどない」とKDDI 技術統括本部 技術戦略本部 担当部長の市村周一氏は話す。

KDDI 技術統括本部 技術戦略本部 担当部長 市村周一氏
KDDI 技術統括本部 技術戦略本部
担当部長 市村周一氏


しかし、月面での活動を本格化させていくためには、様々なインフラを整備していかなければならない。当然、通信と測位のためのインフラも必要不可欠である。

月と地球を結ぶ通信ネットワークも、無人機を遠隔操作したり、取得した調査データなどの送信のために必須となる。現状は、月面着陸船(ランダー)に大型のアンテナと通信機を搭載し、このランダーと地球の地上局が直接通信しているが、月面探査のたびに通信機を月まで輸送するのは非効率である。「1度に限られた重量しか輸送できない宇宙探査において、ランダー、ローバーなどの各宇宙機に大きな通信機を搭載するのは重荷で、電力などの面でも負担が重い」と市村氏は指摘する。

月面探査用のローバーのイメージ写真(出典:JAXAプレスリリース)
月面探査用のローバーのイメージ写真(出典:JAXAプレスリリース)


ところで、月は公転周期と自転周期が一致していることから、常に地球に同じ面を向けている。今までの月面探査の多くは、地球から見える面の範囲(可視域)で行われていたが、今後は月の南極域や裏側や、クレーター内など非可視域へも活動域を広げていくことが期待されている。その場合、ランダーと地球の直接の通信だけでは限界があるため、データ中継衛星などのインフラで通信環境を確保しなければならない。

測位システムも必要だ。月面活動の中心的な役割は、無人のローバーや探査機などが担うことになるが、「そのためには高精度な地図の作成や、ナビゲーションが欠かせない」(市村氏)からだ。
  • Teitter
  • facebook
  • 印刷

スペシャルトピックスPR

>> 今月の月刊テレコミュニケーション

月刊テレコミュニケーション【特集】WIRELESS SMART CITY

<Part1> ネットワークとともに進化する都市
<Part2> スマートシティネットワークの作り方
<Part3> 柏の葉に“Meta発”ミリ波無線の実験場
<Part4> スーパーシティ大阪 L5G広域利用の先行事例に
<Part5> ドローン「レベル4解禁」で変わる都市の物流
<Part6> ワイヤレス給電は都市をどう変えるか?

>>詳しい目次を見る

スペシャルトピックス

レッドハットインフラの自動化で34%の工数削減 レッドハットのネットワーク自動化2.0
人と人のコミュニケーションも効率化し、圧倒的な自動化を実現する。
i-PROセキュリティカメラの映像を遠隔監視 AI機能でマーケティングなどにも活用
幅広い用途に簡単、スピーディー、リーズナブルに対応するi-PRO Remo.
ジュニパーネットワークスWi-Fi 6E×AIで超効率ネットワーク 無線からWANまでクラウドシフト
ジュニパーはWi-Fi 6E時代に向けて、NW運用をAIとクラウドで効率化!
UniFiWi-Fi 6のライセンス費用がゼロに UniFiならコスパ抜群・簡単管理
圧倒的なコスパと手軽さで、オフィス、学校、工場、病院らが採用
日本マイクロソフト走り出した「5G網をAzureへ」計画
クラウド移行でキャリアは何を得るか

AT&Tの5GコアのAzure移行の狙いと進捗状況をマイクロソフトに聞いた。
ローデ・シュワルツ強みのミリ波技術で6G開発に貢献 1THz対応受信器もラインナップに
ローデ・シュワルツが得意のミリ波技術で6Gへの取組を強めている。

モバイル空間統計が直面した困難「ビッグデータのプライバシーを守れ」<連載>NTTグループのプロフェッショナルたち
モバイル空間統計が直面した困難「ビッグデータのプライバシーを守れ」
NTT Comサイバー攻撃事件の舞台裏「侵入者は対策メンバーのアカウントにもなりすましていた」<サイバーセキュリティ戦記>
NTT Comサイバー攻撃事件の舞台裏

「侵入者は対策メンバーのアカウントにもなりすましていた」
セイコーソリューションズISDNからインターネットへ スムーズな移行を可能にするには

ハードウェアを設置するだけ!ISDNからIP網への移行をフルサポート。

AirREAL-VOICE2簡単操作でマイグレーション実現
データ通信だけでなく通話・FAXも

アダプターの入替だけで移行が完了するMIの音声対応LTEルーター

NTTデータINSネットの後継ならお任せ!
移行で伝送時間短縮や負荷軽減

INSネットからの失敗しない移行方法をEB/FBの種類別に紹介しよう。

Wi-SUN AllianceWi-SUN認証デバイスが1億台突破
日本発の世界標準規格の普及加速

2.4Mbpsへの高速化など新たな進化も始まっている。

エヌビディアNTTとLINEが牽引する日本の自然言語処理、この2社がリーダーである理由

3月21日から開催の「NVIDIA GTC 2022 Spring」で知ろう!

ホワイトペーパー

アクセスランキング

tc202012

「通信」の力でビジネスを進化させるbusinessnetwork.jp

Copyright(c) 2020 RIC TELECOM Co.,Ltd. All Rights Reserved. 記事の無断転載を禁じます
当ウェブサイトはCookieを使用しています。閲覧を続ける場合、プライバシーポリシーに同意したことになります。