企業ネットワーク最前線

6G支える「新型光ファイバー」が2025年実用化へ 1本100テラの限界を超えろ

文◎坪田弘樹(編集部) 2022.06.01

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驚異的な勢いで伸びてきた光ファイバーの伝送容量が間もなく限界を迎える。このまま大容量化を目指してもファイバーは燃えてしまう。これを打破する「マルチコア」実用化への挑戦が続けられている。

 
家庭も企業もWi-Fiも5Gも、私たちが利用する通信はほぼすべて光ファイバーネットワークに集約されている。この光ファイバー伝送技術は、これまで驚異的な進化を遂げてきた。

1985年に構築され、当時の世界最高水準を誇った日本縦貫網は、ファイバー1本の伝送容量が400Mbpsだった。35年余を経た今、1本あたりの容量は実用レベルで10~20Tbpsに到達。実に4桁もの大容量化を果たしてきた。

とはいえ、社会の帯域需要は留まるところを知らない。さらに1桁増えた「1本100Tbps」も遠からず実現されるだろう。

このままでは「炎上」するだが、ここに大きな壁が立ちはだかる。「ファイバー1本あたり100Tbpsを超えたあたりが物理的限界と言われている」と話すのは、情報通信研究機構(NICT)ネットワーク研究所 フォトニックネットワーク研究室 室長の古川英昭氏だ。

情報通信研究機構(NICT) ネットワーク研究所 フォトニックネットワーク研究室 室長 古川英昭氏
情報通信研究機構(NICT) ネットワーク研究所
フォトニックネットワーク研究室 室長 古川英昭氏


光ファイバーはガラス製で、内部に「コア」と呼ぶ光の通り道がある。ここにレーザーを強く発光させ、遠くへ光を届けるのが基本的な仕組みだ。容量を拡大するために光のパワーを強くする、光の波を増やすなどの技術が磨かれてきたが、その限界が近づいてきたのだ。

コアの太さは髪の毛より少し太い0.01mm。そこにパワーが集中すると、内部温度は1000度を超えることもあるという。「どこかにゴミや欠陥があると、そこで燃える。現在の技術で100Tbpsを越えようとすると、ケーブル火災を引き起こす危険性が高い」(古川氏)

これを打破するために研究が進められているのが「空間多重」技術を採用した新型光ファイバーだ。実験レベルではNICTが2019年に、光ファイバー1本で毎秒10ペタ(10Pbps)・13km伝送の世界記録を達成している。

光ファイバー通信の基本限界をどのように突破するのか。まず、これまでの大容量化の道のりを簡単に振り返っておこう。

現在使われている光ファイバーは、シングルコア・シングルモードファイバーとシングルコア・マルチモードファイバーの2種類ある(図表1)。外径は0.125mmで、光の通り道であるコアが1つ。その周りを「クラッド」と呼ぶ異なる種類のガラスが覆っている。コアの中を1つの光信号(モード)が通る「シングルコア・シングルモード」が長距離・高速伝送用では一般的だ。

 

図表1 既存の光ファイバー
図表1 既存の光ファイバー


もう1つ、コアを0.05mmと太くして、経路が異なる複数の光信号を通す「シングルコア・マルチモード」ファイバーもある。ただし、モードごとに信号を分離する技術がまだ成熟しておらず「高速化が難しく、消費電力も余計にかかる」(古川氏)ため、用途は限定されている。

そして、伝送容量を拡大するために磨かれてきたのが、図表2の赤・緑で示した多重化技術群だ。

 

図表2 多重化技術による伝送容量の拡大
図表2 多重化技術による伝送容量の拡大


レーザー光のオン/オフの間隔を短くする時間多重(時分割多重)により、1つの波長(チャネル:ch)で、より多くの情報が送れるようになった。さらに、波長を複数使って並列伝送する波長分割多重により、「1Gbpsの波長を4ch」といった掛け算が可能になり、伝送容量は飛躍的に向上した。

もう1つ重要なのが多値変調、いわゆるコヒーレント伝送だ。光の状態(振幅・位相)を精密に制御してデータを表現する技術で、単純なオン/オフによる2値(0と1)ではなく、4値(00/01/10/11)などを表現して情報量を増やす。

こうした技術で伝送容量が拡大する一方、それに比例してコア内を通る光のパワーが増大。前述の通り、限界に近づきつつある状況だ。

これを超えるための新しい軸が「空間多重」。つまり「マルチコア」と「マルチモード」である。
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