<特集>ローカル5G超入門 「基本」から「一歩先」までシスコに聞く企業ネットワークとローカル5G Wi-Fi・LANと統合運用

企業にとってローカル5Gは、Wi-Fiや有線LANで構築された既設ネットワークに新たに加わるアクセス手段の1つとなる。効果的に融合させるには、どんな視点でローカル5Gを導入すべきなのか。シスコに聞いた。

2020年末に実証環境「5Gショーケース」を開設して1年。シスコシステムズにはローカル5Gの導入を検討する企業から様々な相談が持ち込まれているという。サービスプロバイダーアーキテクチャ事業担当執行役員の高橋敦氏によれば、最も多いのが運用に不安を抱く声だ。「本当に使いこなせるのかと、Wi-Fiと同じようには運用できないことに不安を持っている」

全国各所で行われているローカル5GのPoCやトライアルは、電波伝搬特性や通信性能の検証に主眼が置かれている。事前検証・準備の負荷が大きく、これまではユーザーもベンダーも運用にまで意識が回らなかったというのが正直なところだ。

サービスプロバイダー アーキテクチャ事業本部 プロダクトセールススペシャリストの小林智典氏も、この点がローカル5Gの普及の足かせになりかねないと危惧する。「これまで行われてきたPoCは性能試験ばかりで、運用フェーズが考慮されていない。このハードルを下げる必要がある」。ローカル5Gの普及という観点でも、実装・運用形態を真剣に考えるべき時期が到来している。

ローカル5G導入の3要点企業ネットワークを知り尽くしたシスコは、ローカル5Gを企業ネットワークに組み込む際に、何がポイントとなると考えているのか。高橋氏が挙げるのが次の3つだ。

1つが、マルチアクセスの実現だ。「将来的には企業ネットワークにWi-Fi 6と有線LAN、ローカル5Gが併存することが当たり前になる」と同氏は予想する。運用を複雑化させないためには、これらのアクセス手段を統合的に管理する仕組みが不可欠だ。

2つめがシンプル化である。

Wi-Fiや有線LANでは、設定を自動化する機能や、GUI画面での設定変更・管理、障害発生時の通知や原因箇所特定のための機能が拡充されてきている。これまで通信事業者しか扱ってこなかった5Gシステムを運用する以上、ローカル5Gではより一層、シンプルに運用できる仕組みが求められる。ローカル5G検証機では一部、GUI画面で設定変更が可能なものも登場してきてはいるが、実運用時の使いやすさにまで配慮されていると言えるものは、まだ存在しない。

シスコの5Gショーケースには、クラウドWi-Fiの「Merakiのような簡便さでローカル5Gが使えるようにできないか」といった声も多く寄せられているそうだ。情報通信産業事業統括 SEマネジャーの山田欣樹氏は「ローカル5Gは無線免許の取得が必要なので、まったく同じようにとはいかないが、できるだけ近づけたい」と話す。シスコではこうした要望に応えるローカル5Gソリューションの展開を準備中だという。

最後はオープン性である。Wi-Fiでも有線LANでも、企業は標準規格に準拠した製品の中から目的にあったものを自由に選択し、時には組み合わせて使える。ローカル5Gでも基地局やコアネットワークをマルチベンダーで構成できる環境が整うことで、「イノベーションや経済性を加速させる流れができる」(高橋氏)。

RANや5GCベンダーには標準規格に則った相互接続性はもちろん、マルチアクセスの実現やシンプル化を下支えするための管理機能の共通化等が求められる。ユーザー側も性能や価格だけでなく、運用性や既存ネットワークとの連携を念頭においてソリューションを選ぶことが重要だ。

月刊テレコミュニケーション2022年2月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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