地域のトラフィック流通改革へ一手 仙台と福岡に地域IXと共通CDN

トラフィックが急増する中、日本のトラフィック流通を改革する取り組みが始まった。都市圏に集中するインフラを地域に分散できれば、日本全体でトラフィックの無駄が減る可能性がある。

コロナ禍で、日本のトラフィック流通の非効率性が浮き彫りになっている。

国内のトラフィック量はここ数年、年間2~4割と高いペースで増加してきた。総務省によれば、この傾向はコロナ禍で加速しており、2020年11月には固定系ブロードバンドサービスのトラフィック量は1日あたり約214ペタバイトを記録し、前年同月比で56.7%の増加となった(図表1)。

図表1 我が国におけるトラフィック量の推移

図表1 我が国におけるトラフィック量の推移

「家庭で過ごす人が増えており、動画やゲームのアップデートなどが特に増えている」とBBIX COO補佐の鶴巻悟氏は説明する。

このトラフィック増が、地域のISPを苦しめている。背景には日本のインターネット基盤の大部分が東京や大阪など首都圏に集中していることがある。現在、日本には多数のISPが存在しているが、異なるISP同士で通信をするには、IX(相互接続点)などでトラフィックを交換する必要がある。

ところが、このIXはコストや人材などの問題から、7割程度が東京にあるといわれている。そのため、同じ地域のユーザー同士が通信し、地域内終端できるはずのトラフィックも都市部のIXを1度経由する必要がある構造だ。

地域のユーザー同士の通信でも大きく迂回する仕組みのため、地域のISPほどインフラに負荷が高まりやすいし、ネットワークの遅延も大きくなる。「今後はGIGAスクール構想におけるオンライン授業など、低遅延性が求められるコンテンツも増えていく」と鶴巻氏は展望するが、これらのコンテンツも利用しにくくなるのである。

CDN、末端までは置けずまた、地域ユーザー同士の通信に限らず、通常のトラフィック流通においても地域のISPには負荷がかかっている。動画やアプリケーションなど、オリジナルのコンテンツをホストしたWebサーバー(オリジンサーバー)の多くは東京・大阪に設置されている。人気コンテンツであれば、そのISPの網内、あるいはIX内のキャッシュサーバーにキャッシュされているため、大抵の場合、オリジンサーバーまで取りに行く必要がない。

しかし、地域ISPの場合は事情が異なる。コンテンツ事業者やCDN事業者らは当然、コスト効率を考えて、ユーザー数の多いISPの網内にキャッシュサーバーを設置する。

結果、ユーザー数の多くない地域ISPの多くは、「東京・大阪のIXやオリジンサーバーまで、他社にピアリングしてトラフィックを流してもらわざるを得ない。地域によっては、ISPが利用できるピアリング拠点までの専用線は1社が寡占していることもあり、トランジット料金も高止まりしがちだ」と鶴巻氏は解説する。

月刊テレコミュニケーション2021年4月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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