「取り組みから4-5年たっても半数がPoC以前」IDCがIoT企業ユーザー調査

IDC Japanは2020年11月10日、国内IoT市場の企業ユーザー動向の調査結果を発表した。これは2020年8月から9月にかけて全国の従業員規模100人以上の企業を対象に実施したもの。

企業のIoT利用率や具体的なユースケースなど市場の概況を調査する「IoT利用企業動向調査」と、企業の中で自身の業務の1割以上をIoTに充てるIoT担当者の課題などを調べる「IoT担当者深堀調査」という2つの項目で行われた。

IoT利用企業動向調査では、調査対象の3674社の内、同社の定義する「IoT利用企業」に該当するのは248社で、利用率は6.8%となり前年比で0.1ポイント、2015年比で1.9ポイント増加したことが判明した。IoT利用企業の多くは、社内業務プロセスの合理化/コスト削減を目的としている。IoTを顧客向けの製品/サービスの付加価値創出や新たなビジネスに役立てる「DX用途」を推進する企業も全回答の1.5%の割合を占めているが、新型コロナウイルス感染症の影響などによりそれらのプロジェクトの一部が停滞している可能性がある。
IoT利用動向の調査結果

IoT担当者深堀調査では、IoTの取り組みを開始してから4~5年経過していても、その半数以上は未だにPoC(Proof of Concept)以前の取り組みフェーズにあることが分かった。IoTソリューションを提供するベンダーはそうした企業を本番フェーズに引き上げるべく、なんらかの方策を見出さねばならないと言える。

IoT担当者からの回答を分析したところ、課題は大きく3つあった。1つめがIoT関連人材の不足やIoTを実現する上での技術面における知見が不足していること。2つめにビジネス現場のIoTに対する理解が不足している、あるいは社内外のIoTに関わる組織間連携が難しいという回答が多かったという。3つめはIoTの収益性が見通せないことや予算不足、経営層の理解不足だ。

IDCJapan コミュニケーションズ シニアマーケットアナリストの鳥巣悠太氏は「IoTを推進する人材とDXを推進する人材の双方には類似したハードスキルが求められており、IoTはDXを実現する上での不可欠な要素として市場に認識されつつある。IoT技術者の育成がDXの普及に向けて必須と考えられる」と言う。そして「IoTを本番フェーズで利用する企業では、業務プロセスのスピード、データの種類/量、デジタル人材の割合、パートナーの数、デジタルサービスの数、データに対する投資のリターンなどをKPIとして重視する点が特徴的である。IoTの取り組みフェーズに合わせた柔軟なKPIの設定が不可欠になる」と述べている。

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