<特集>コロナ・5G・AIキャリア網をAIが高品質に 基地局が自動で調整

キャリアにとって通信品質は最も重要な指標の1つだが、AIで最適化する取り組みを各社が始めている。将来的には無線インターフェースの物理層もAI技術を前提としたものに進化していきそうだ。

キャリアにとって、通信品質はユーザー獲得の競争力に直結する。そこで、どのキャリアもできるだけ高品質を維持しようと、発信した電波の接続成功率や通話の切断率など、様々な指標を設定しながら日夜努力を重ねている。しかし、悩ましいのは無線が環境変化による影響を受けやすいことだ。「季節や曜日、時間帯によっても環境は変わる」とKDDIの根村諭氏は語る。

KDDI 自動化開発グループリーダー 根村諭氏
KDDI 自動化開発グループリーダー 根村諭氏



そのため、キャリアは全国各地に技術者を配備し、現地調査と通信品質の分析、そして改善策の立案・実行というサイクルを回しながら品質を維持してきた。

ただ、通信品質に関連するデータは量も種類も膨大だ。「人の目で見られる数には限りがあった」とNTTドコモの浜瀬利道氏は明かす。

NTTドコモ 無線アクセスネットワーク部 エリア品質・品質企画担当 浜瀬利道氏
NTTドコモ 無線アクセスネットワーク部 エリア品質・品質企画担当 浜瀬利道氏



こうした背景から、キャリアは大量のデータを扱えるAI技術を、通信品質向上のために活用し始めている。

500倍近い運用効率化もKDDIがエリクソンと共同開発し、全国の基地局に展開しているのが図表1の仕組みである。自律的に各基地局から収集したデータをもとに、AIが最適な無線ネットワークパラメーターの提案を行う。

図表1 AIを活用したネットワーク最適化手法の概要

図表1 AIを活用したネットワーク最適化手法の概要

AIの強みの1つは、過去や別の地域のデータと瞬時に比較できることだ。「例えば、あるエリアのスループットを前の週と比較するなどして、すぐ通常時と異なることに気づける」と根村氏は説明する。

こうした分析は人間でも可能だが、AIとはスピードが全く異なる。「あるトライアルでは、10人日・80時間ほどかかっていた基地局の調整作業が、AIを活用したことで約10分に短縮した」。単純計算でおよそ480倍の効率化だ。

また、エリクソンはAI技術により、過密エリアのスループットを10%近く向上できたと発表している。従来であれば、最適なパラメーターを導き出すのに数千時間かかる過密エリアの分析が30分以下に短縮可能になったという。

「最終的にはネットワークが生きているかのような、その場に応じた最適化を基地局が自動で実施する、ハンズフリーなシステムを目指している」(根村氏)。

月刊テレコミュニケーション2020年6月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

続きのページは、会員の方のみ閲覧していただけます。

RELATED ARTICLE関連記事

SPECIAL TOPICスペシャルトピック

スペシャルトピック一覧

FEATURE特集

NEW ARTICLES新着記事

記事一覧

WHITE PAPERホワイトペーパー

ホワイトペーパー一覧
×
無料会員登録

無料会員登録をすると、本サイトのすべての記事を閲覧いただけます。
また、最新記事やイベント・セミナーの情報など、ビジネスに役立つ情報を掲載したメールマガジンをお届けいたします。