アルバCTOに聞くWi-Fiの3つの疑問――5Gとの関係、ネットワーク運用自動化、クラウド化

11ax(Wi-Fi6)の登場で盛り上がるWi-Fi市場だが、注目トピックはそれだけではない。アルバのCTOでIEEE802.11やIETFの標準化にも参加するパーサ・ナラシムハン氏に、Wi-Fiの将来について聞いた。

――IEEE802.11ax対応の法人向け製品が出揃ってきました。実効速度とデバイス収容能力の向上が11axの主な特徴ですが、今後の普及の見通しについてどう見ていますか。

ナラシムハン 普及のスピードは、11axならではのユースケースがどれほど広がるかによるでしょう。具体的にはIoTの進展、デバイスの密度次第になります。

IoTのトラフィックはまだそれほど大きくありませんが、デバイスの数は急増しています。これを収容するのに11acでは不十分となれば、11axが使われることになると思います。

特に普及のスピードが減速する要因は見当たりません。これまでの11a/b/gから11n、11acへの移行と同様の動きになるでしょう。

そして、5Gも大きな影響を及ぼします。

5Gでは超高速・大容量通信が可能ですが、高い周波数帯を用いるので屋内には電波がなかなか届かないという状況が発生します。5Gのビジョンを本当に実現しようとすれば、屋内ネットワークにおけるWi-Fiの重要性が増すと考えています。

5GとWi-Fiは競合しない――5Gのユースケース開拓において、小型基地局を屋内に展開して固定アクセスの代替として用いようとする取り組みも進んでいます。Wi-Fiの使われ方と似ていますが、5GとWi-Fiが競合するとは考えられませんか。

Aruba, a Hewlett Packard Enterprise company 最高技術責任者(CTO) パーサ・ナラシムハン氏
Aruba, a Hewlett Packard Enterprise company
最高技術責任者(CTO) パーサ・ナラシムハン氏

ナラシムハン まったく考えていません。移動体通信をそうした用途に使おうという取り組みは、これまでにもありました。フェムトセルです。

アルバも以前、エリクソンと協力してフェムトセルを開発していましたが、商業的に成功しませんでした。要因は技術的な問題ではなく、屋内へのデプロイ方法やセル設計、プロバイダー間の調整といったビジネス上の課題です。

移動体通信をオフィスや工場等の屋内に展開するには解決すべき問題が多く、私には、そこで無理をするよりも、“あるものを使おう”という動きが進んでいるように見えます。非常に大きなキャパシティを持つWi-Fiがすでに使える状態にありますし、むしろ、Wi-Fiがあることで5Gの有効性が増すと考えています。

――5GとWi-Fiは補完関係になると。

ナラシムハン Wi-Fiは携帯電話ネットワークと遜色ない性能を持ち、かつ、11axはLTEと非常に似たテクノロジーを用いています。

しかも、携帯電話ネットワークとWi-Fiネットワークの連携も進んでいます。近い将来、ユーザーは意識せずにシームレスに切り替えて使えるようになると思います。

月刊テレコミュニケーション2019年7月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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