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<特集>5Gのホントの実力

見えてきた5Gの実力――どこでも実効100メガ

文◎坪田弘樹(編集部) 2019.07.30

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日本でも5G商用サービスの開始まで1年を切ったが、その実力はどれほどのものか。国内外で行われている実証実験の成果から具体的な性能が見えてきた。有望ユースケースをもとに5Gの実力を測る。

 
「最大速度20Gbps」「遅延1ms」といった性能がクローズアップされる5Gだが、これらはいわゆるカタログスペックであり、誰もがこの能力を常に使えるわけではない。

また、5Gの特徴である超高速・大容量通信(eMBB)と超低遅延・高信頼通信(URLLC)、大量端末接続(mMTC)の3つは、すべて同時に実現できるわけでもない。アプリケーション側の要求に応じて、どの特性を優先するかを調整して使うことになる。しかも、このうち仕様が固まっているのはeMBBのみ。URLLCについては2020年3月完了予定のリリース16(以下、R16)で仕様が決定する予定だ。

では、来年始まる5Gは、どれほどの性能を備えて私たちの前に登場するのか。

5Gの真価は上りの大容量化5G商用サービスの開始当初はeMBBがメインとなる。LTEでも理論上は下り最大1Gbps超、上り最大100Mbps超が実現されているが、それとの最も分かりやすい違いは次の2つだ。

1つは、8K映像の伝送も可能な実効100Mbpsの無線通信がどこでも誰でも利用可能になると期待できること。これが、5Gがまず目指す世界である。KDDI総合研究所の執行役員で次世代アクセスネットワーク部門長を務める岸洋司氏は、「4Gでもできないことはないスペックだが、限られたお客様だけがすごくリッチなサービスが使えるに過ぎない。広くあまねくリッチなサービスを受けられるようにするために5Gを入れていく」と話す。これを可能にするキャパシティこそが、5Gの本質というわけだ。

KDDI総合研究所 執行役員 次世代アクセスネットワーク部門長 岸洋司氏
KDDI総合研究所 執行役員 次世代アクセスネットワーク部門長 岸洋司氏



特にLTEとの違いを際立たせるのが、上り通信の大容量化だ。NTTドコモ 執行役員 5Gイノベーション推進室長の中村武宏氏は5月末に東京ビッグサイトで開催された「ワイヤレス・テクノロジー・パーク(WTP)2019」の講演で、「様々な産業界と多くのユースケースをやってきたが、上りリンクのニーズが非常に高まっている」と述べた。上りでも“どこでも100Mbps”が実現できれば、無線通信の活用範囲は格段に広がる。

NTTドコモ 執行役員 5Gイノベーション推進室長 中村武宏氏
NTTドコモ 執行役員 5Gイノベーション推進室長 中村武宏氏


上り方向に帯域を割り当てこれについて、ノキアソリューションズ&ネットワークス 技術統括部 部長の柳橋達也氏は、「初期の5G周波数は、ほぼTDD(上り下りで同一周波数帯を共有する)で使われる高域の周波数ばかりなので、上り下りの周波数割当比率が静的に維持されるFDDに比べて、割当比を柔軟に調整できる」と話す。結果的に、「上り方向の通信に大きな帯域を割り当てることも可能になる」という。

複数のカメラで撮影した高精細映像を無線でサーバーやクラウドに送り、360度映像や自由視点映像、VRコンテンツに加工して配信したり、AIで解析したりといった新たな体験・サービスが可能になる。KDDI総研の岸氏は「8K映像が1つ送れても、新しいユーザー体験を創出するのは難しい。複数視点の映像を伝送できる5Gの能力と、それを合成・加工する映像技術が組み合わさることで新しい体験を実現できる」と語る。

なお、映像伝送に必要な帯域はフルHDで10~15Mbps、4Kで30~40Mbps、8Kで80~100Mbps。フルHDや4Kなら1つの5G回線で複数の映像が送れる。8K伝送も個別に1回線ずつ使えば支障はない。

例えば、KDDIがJALと共同で行う実証実験では、8K映像を飛行機の外観目視点検に用いようとしている。複数の8Kカメラで撮影した超高精細映像によって異常を判断する。高所作業が不要になり、整備作業の効率化が期待できる。

 

8K映像を用いた機体外観整備のデモ。遠くから機体全体を撮影しても、ズームアップすれば細かな部位まで確認できる
8K映像を用いた機体外観整備のデモ。遠くから機体全体を撮影しても、ズームアップすれば細かな部位まで確認できる

 



そして、もう1つのLTEとの違いが低遅延性だ。

5Gでは無線区間の遅延が最小1msまで縮まる。さらに、現場近くでコンピューティング処理を行うエッジコンピューティングと組み合わせることで、エンドツーエンド(E2E)の遅延も削減する。上記のような高精細映像処理の遅延を含めても、人間の反応速度に匹敵する数百msの低遅延通信が可能になる。
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