ドローン「目視外飛行」の早期実現へ、オールジャパンで取り組むNEDO「DRESSプロジェクト」

ドローン活用の本格化には、目視外飛行が不可欠だ。NEDOを中心とする「DRESSプロジェクト」には、国内の有力企業が数多く参加。オールジャパンで目視外飛行の実現に必要な技術開発に取り組んでいる。

少子高齢化が急速に進む日本は近い将来、様々な業種で人手不足の深刻化が予想される。その解決策として期待を集めているのが、無人航空機ドローンだ。

経済産業省が2018年6月に公表した「空の産業革命に向けたロードマップ2018~小型無人機の安全な利活用のための技術開発と環境整備~」(官民協議会作成)では、ドローンの飛行状況のレベル別に具体的な活用時期が明記された。

レベル1~2の目視内(肉眼による範囲内)での操縦飛行や自律飛行はすでに実用化されており、農薬散布や映像コンテンツの空撮、インフラの点検などで活躍している。続くレベル3の「無人地帯での目視外飛行(補助者なし)」は2018年~、「有人地帯(第三者上空)での目視外飛行(同)」は2020年前半~の本格化を目標に掲げる(図表1)。

図表1 ドローン利活用のロードマップ
図表1 ドローン利活用のロードマップ

レベル3における活用例が、離島や山間部への荷物配送、被災状況の調査、長大なインフラの点検などだ。レベル4は、都市の物流や警備、発災直後の救助や避難誘導、都市部のインフラ点検など、人口密集エリアでの高度な活用を想定している。

このようにレベル3~4の実現には目視外飛行が不可欠だ。現状では改正航空法により補助者の配置が義務付けられているほか、第三者上空での飛行は原則禁止だ。したがって、「目視を代替する機能」および「第三者への安全を確保する機能」という2つの要件を満たす技術開発が必要となる。

国内では、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が、こうした技術開発を担っており、2017年に「ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト(DRESSプロジェクト)」を立ち上げた。民間企業など38社もメンバーに名を連ねる“オールジャパン”のプロジェクトだ。日本の総力を結集し、海外より遅れているといわれるドローン活用の挽回を図り、世界を先導する立場に立ちたいという狙いがある。

運航管理システムを開発複数のドローンが上空を飛び交い、物流やインフラ点検、災害対策などに活躍する――。

そうした社会を現実のものとするには、ドローンが安全かつ効率的に飛行するための「運航管理システム」の仕組みが必要だ。「狭いエリアを異なる用途のドローンが飛び交うことを想定している日本では特に重要な技術」。DRESSプロジェクトを統括するNEDO ロボット・AI部 主査 プロジェクトマネージャーの宮本和彦氏はそう話す。

そこで、DRESSプロジェクトでは、異なるメーカーや目的のドローンを横断的に管理できるシステムの開発を目指している。

NEDO ロボット・AI部 主査 プロジェクトマネージャー 宮本和彦氏
NEDO ロボット・AI部 主査 プロジェクトマネージャー 宮本和彦氏

開発中の運航管理システムは、情報提供機能、運航管理機能、運航管理統合機能の3つで構成される。情報提供機能のうち、3次元地図情報はゼンリン、気象情報は日本気象協会というように、DRESSプロジェクトに参加する民間企業各社がそれぞれ得意とする分野を担当しているのが特徴だ(図表2)。

図表2 運航管理システムの構成[画像をクリックで拡大]
図表2 運航管理システムの構成

これら3つの機能が協調することで、各ドローンの飛行計画や飛行経路を調整し、同一空域での複数ドローンの安全な飛行を実現できるようになる。

今年2月に南相馬市復興工業団地内の「福島ロボットテストフィールド」で行われた実証実験では、900×600mの敷地上空を災害調査・警備・物流・郵便と4つの異なる目的を持った計10機のドローンが15分程度にわたり目視外で自律飛行を行った。目的ごとに飛行する高度や距離や経路が異なるドローンが飛び交うため、事前には接触事故の発生も想定されたが、運航管理システムが正常に作動し、安全に飛行できることが確認できたという。

2019年度は運航管理システムのAPIを順次公開し、プロジェクトに参加していない国内外のドローン事業者にも福島ロボットテストフィールドでの運航試験が行えるようになる計画だ。

月刊テレコミュニケーション2019年5月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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