企業ネットワーク最前線

LoRaと光回線で“登り窯”をIoT化――NTT東などが伝統技術の継承へ実証実験

文◎藤井宏治(IT通信ジャーナリスト) 2019.05.08

  • bookmark
  • Teitter
  • 印刷

今や珍しくなった薪窯による陶器焼成――。そのプロセスを、クラウドカメラの映像や、LoRaを介して取得した窯内の温度データの形で記録し、伝統技術の継承に役立てることを狙った公開実証試験が、山梨県富士川町で行われている。陶芸の伝統技術の継承にIoTはどこまで活かせるのか。

 
この実証実験は、NTT東日本が山梨県富士川町の窯元「増穂登り窯」、IoTシステムの開発などを手がけるアイエスエー(以下ISA)、陶芸愛好者向け隔月誌の『陶遊』(エスプレス・メディア出版)と共同で、2019年4月27日から5月11日まで実施しているもの。

実験では陶遊誌上で公募した全国の陶芸愛好家125名から送られてきた600点を超える作品を、高さの異なる3つの燃成室を持つ登り窯で焼く。

登り窯での作業の様子
登り窯での作業の様子



スマートフォンでも登り窯の温度がリアルタイムで確認できる
スマートフォンでも登り窯の温度が
リアルタイムで確認できる
火入れから窯出しまでの課程を、作業所の天井に設置した2台のカメラ(焚口用、俯瞰用)で撮影し、Wi-Fiを介してまず20mほど離れた事務所に送る。さらに光回線でNTT東日本が構築したクラウドに送信・蓄積する。同時に、登り窯の3つ燃成室の上部に設置された耐熱型温度センサーで得られた温度データも、LoRaで事務所に送られ、光回線経由でクラウドに蓄積される。

これらの映像・温度データは、NTT東日本のポータルサイトを通じて一般公開され、作品を送った陶芸愛好家が「窯焚き」の課程を「仮想体験」できるようになっている。

NTT東日本では、実証実験で得られた映像・温度データを、専門家を交えて分析、ノウハウの数値化(プロファイル)によって伝統技法の継承が容易に行えるようになるかを検証する。

実証実験のシステムイメージ
実証実験のシステムイメージ


 
公開実験のフィールドとなった増穂登り窯は、1990年の開窯以来、間伐林を使い薪窯のみで焼成を行っている全国でも珍しい窯元である。画家・版画家で、映画監督としても活躍した池田満寿夫氏(1934-1997)が、作陶の場としたことでも知られている。

増穂登り窯代表の太田治孝氏は、「安土桃山時代や江戸時代の焼き物は、当然、薪で焼かれていたはず。これを復活させたら面白いものができるのではないかと池田氏と話したのが、ここに窯を開くきっかけになった。だが、伝統工芸の世界は閉鎖的で、技術をなかなか外に出してくれず、薪窯を使っているところ自体も減っていたため、独力で技術を習得するしかなかった」と振り返る。

さらに実証実験に参加した経緯について、「30年間で560回窯焚きをして技術は確立できたが、見渡すと薪窯をやる人が他にいなくなってしまっていた。なんとかこの技術を途絶えさせないようにしたいと考えていたところに、お声がけをいただいた」と説明する。

増穂登り窯 代表 太田治孝氏
増穂登り窯 代表 太田治孝氏



増穂登り窯では、会員制で薪窯をプロ・アマチュア陶芸家の作陶に開放しており、窯焚き技術の継承にも力を入れている。

感覚や経験に頼った旧来の手法では、多数の会員に技術を伝えるのが難しいことから、ノウハウの数値化にも意欲的に取り組んでいる。そのカギとなるのが温度管理だ。

窯に挿入した温度センサーで得られる数値を火入れから窯出しまで1時間毎に読み取りグラフ上にプロット。これにより焼成の進行状況を把握して、燃やす薪の量や種類を変えていくという。

「私自身は温度計がなくても時間や薪の量、陶器の光具合などを見て、焼けてしまうが、数十人が協力して作業するには、数字で示すことが絶対に必要だ」と太田氏は語る。

実証実験では、この温度センサーから情報を取得し、1分間隔でクラウドに蓄積。映像によるデータと組み合わせ分析することで、精度の高い工程管理の可能性を探る。

太田氏が、今回の実証実験で特に高く評価しているのが、クラウドカメラによって焼成作業の全工程が映像として記録されたことだ。

増穂登り窯では今回、クラウドカメラに映らない窯の中に作品を並べる「窯詰め」の様子もハンディカメラで撮影し、YouTubeで一般公開した。

詳細な工程が映像として残ったことで、「もし私が今窯を閉じたとしても、新しく薪窯をやりたいという人がこれを見れば、復活させることができる」と太田氏は期待を寄せる。

増穂登り窯では、窯焚きを行う際に1時間毎に窯の中の温度を手作業で記録している。奥のタブレットには、同じ温度センサーのデータが1分毎の精度で表示されている
増穂登り窯では、窯焚きを行う際に1時間毎に窯の中の温度を手作業で記録している。
奥のタブレットには、同じ温度センサーのデータが1分毎の精度で表示されている


登り窯の天井部分に設置されている温度センサー
登り窯の天井部分に設置されている温度センサー

続きのページは「business network.jp」の会員の方のみに閲覧していただけます。ぜひ無料登録してご覧ください。また、すでに会員登録されている方はログインしてください。

スペシャルトピックスPR

mobile1910
extreme1910
zscaler1911

>> 今月の月刊テレコミュニケーション

月刊テレコミュニケーション【特集】クラウドネットワーキング革命
<Part1>5G網はクラウドネイティブ コンテナで進化するNFV <Part2>中小企業で増加する「DCにルーターだけ問題」を仮想ルーターで解決 <Part3>コンテナNWの課題と展望 <Part4>VMwareが考える新クラウド時代のネットワーク <Part5>クラウド時代の防衛戦略

●[インタビュー] OKI 常務 坪井正志氏「社会インフラ×IoTは新段階へ」 ●5Gで東京を最先端の都市に ●「つながるクルマ」は内と外で守る ●オンラインゲームはなぜ狙われる ●5GにおけるSDNの役割とは? ほか

>>詳しい目次を見る

ホワイトペーパー

スペシャルトピックス

ZscalerDX加速させるクラウドセキュリティ
「100ms以下」の遅延で快適利用

Zscalerの革新的アーキテクチャで働き方改革を強力推進!

パロアルトネットワークスパブリッククラウド基盤の
セキュリティ対策はどうする?

開発のライフサイクル全体でリソースを保護する「Prisma Cloud」

ヤマトロジスティクスキャッシュレス化に乗り遅れるな!
決済端末の導入・運用を一括代行

キャッシュレス決済の導入をヤマトロジスティクスがトータル支援!

MIPHS/ISDNからの移行を
「安価」かつ「手軽」に

PHSモデムの入れ替えだけで「LTE化」が完了する!

ヤマトロジスティクスキッティングから配送まで一括提供
PC移行の工程はすべてお任せ!

Windows 7の延長保守サポート終了! ヤマトなら安心して任せられる

サンテレホン何か「御用」ありませんか? 国内最大級ICT機材のECサイトが誕生

10万点の情報通信機材を取り扱うECサイト「GOYOU(ゴヨー)」

エス・アンド・アイMS Teams×電話に新たな選択肢
キャリア回線使用で通話品質も安定

SBC機能のクラウド提供も開始 “設備レス”でDirect Routing導入

ブラステルクラウドPBX市場のパイオニア
信頼性と音声品質で5万台の実績

IP電話に関する調査では3項目で1位を獲得! ブラステルの「Basix」

三通テレコムサービス“明朗会計”で人気のクラウドPBX

ユーザーが増えても基本料は最大4900円! 三通テレコムサービスの「clocall PBX」

モバイルテクノミリ波の設計・製造を強力支援
5G時代の多様なニーズに応える!

モバイルテクノがミリ波モジュール設計開発サービスを拡充した。

エクストリーム ネットワークス5万人利用のNWをわずか2名で運用
IT管理者に嬉しいWi-Fi 6対応AP

エクストリームのWi-Fi 6対応APならAI自動RF管理など機能が満載だ。

アクセスランキング

tc1904
banner27

「通信」の力でビジネスを進化させるbusinessnetwork.jp

Copyright(c) 2018 RIC TELECOM Co.,Ltd. All Rights Reserved. 記事の無断転載を禁じます