ICT×未来

[シリーズ]FUTURE NETWORK 最終回

給電の未来は「ワイヤレス」へ――IoTデバイスに効率的に電力供給

文◎村上麻里子(編集部) 2017.07.18

  • Teitter
  • facebook
  • 印刷

IoT化が進んだ未来、データだけではなく、電力もワイヤレスで送るのが当たり前になっているかもしれない。配線や電池交換が不要で、電力を供給できるワイヤレス給電への期待が高まっている。

 
インターネットにつながったIoTデバイスの数は、2020年には300億台になるとも500億台になるともいわれる。いずれにしろ、現状を大きく上回る数のデバイスが巷にあふれることは間違いない。

IoTデバイスの動作には電源が不可欠だが、有線や電池交換による給電の場合、膨大な数のデバイスに対応するには配線や交換コストなどの面で大きな課題がある。そこで本格的なIoT時代の到来を前に、IoTデバイスに適した給電方法として、ワイヤレス給電が注目を集めている。

高さの自由度も実現ワイヤレス給電は非接触電力伝送とも呼ばれるように、ケーブルに接続せずに給電する技術だ。その方法は大きく「非放射型」と「放射型」に分類される。

非放射型は近傍領域への給電に使われるもので、電磁誘導式や磁界共鳴式などの方法がある。これに対し、遠方のデバイスに給電できるのが放射型で、マイクロ波を使った電波式が知られている(図表)。

 

図表 ワイヤレス給電の主な方式
図表 ワイヤレス給電の主な方式


これらの方式の中で実用化が最も進んでいるのが、送電側と受電側の間で発生する誘導磁束を利用して電力を送る電磁誘導方式だ。WPC(Wireless Power Consortium)が策定したワイヤレス給電の国際標準規格「Qi(チー)」がよく知られており、国内ではスマートフォン/タブレットの一部機種が対応しており、カフェなどの一部施設でも利用できる。

Qiは、送電側(充電器)に埋め込まれたコイルに電流を流すと磁束が生じ、受電側(端末)内部のコイルにも電流が流れる仕組みだ。電動歯ブラシなどにも使われている技術だが、伝送距離が短く(数mm~10cm)、しかも数mm程度でもずれると給電できない。送電側と受電側をぴったりと密着させないと伝送効率が下がってしまうため、IoTではスマートデバイスなどを所定の位置に置いて充電する用途にとどまると見られる。

磁界共鳴式は、送電側と受電側の双方にコイルおよびコンデンサを埋め込み、それぞれの共振器を共鳴させることで電力を伝送する。伝送距離は1~2m(理論上は数m以上)と電磁誘導方式よりも距離を長く取ることができ、主に電気自動車(EV)向けの給電方式として開発が進められている。

電磁誘導式と比べると磁界共鳴式は「平面」と「高さ」についての自由度はあるが、「向き」における自由度は同じように低く、受電器と送電器を平行に置かないと効率良く給電できないという不便さがある。その解決策として、富士通研究所は3次元(3D)によるワイヤレス給電を開発している。

富士通が開発した3Dワイヤレス給電は、平面だけでなく高さも自由度があり、複数のデバイスを干渉し合うことなく給電できる
富士通が開発した3Dワイヤレス給電は、平面だけでなく高さも自由度があり、
複数のデバイスを干渉し合うことなく給電できる


3Dワイヤレス給電は、送電器に対する受電器の向きに関係なく給電を行えるものだ。技術的には、「送電コイルと電源の間に切替器を入れることで、電源とコイルの接続方法が複数から選択できるようになる」と同社フロントテクノロジー研究所フロントデバイスプロジェクト研究員の内田昭嘉氏は話す。受電コイルの向きに応じて接続経路を切り替えることで、受電器の角度や向きに最適な磁界を作り出せるようになるという。

富士通研究所は当初、オフィスでスマートフォンやタブレット、ノートPCなど複数のデバイスを操作しながら給電する利用シーンを想定していた。しかし、複数のデバイスを同時に、しかも互いに干渉することなく給電できるため、「様々な場所に多様な方向で配置されるIoTデバイスにも有効なのではないか」(同研究所フロントデバイスプロジェクト主任研究員の大島弘敬氏)とIoTにおける活用も視野に入れている。
富士通フロントテクノロジー研究所 フロントデバイスプロジェクト 主任研究員の大島弘敬氏(右)と研究員の内田昭嘉氏
富士通フロントテクノロジー研究所 フロントデバイスプロジェクト 主任研究員の大島弘敬氏(右)と研究員の内田昭嘉氏
続きのページは「business network.jp」の会員の方のみに閲覧していただけます。ぜひ無料登録してご覧ください。また、すでに会員登録されている方はログインしてください。

  • Teitter
  • facebook
  • 印刷

スペシャルトピックスPR

viavi2108
windriver2108
itfor2108

>> 今月の月刊テレコミュニケーション

月刊テレコミュニケーション【特集】次世代Wi-Fi特別講義
<11be>「Wi-Fi 7(仮称)」は意欲的 <11ay>100Gbpsの60GHz帯無線
<11az>誤差1m以内で位置推定 <11bf>侵入者も転倒も無線で検知
<11ba>新発想で超低消費電力 <Wi-Fi 6E>“最後のフロンティア”で飛躍
<Wi-Fi QoS Management>リアルタイム通信を優先制御

インタビュー東京工業大学 阪口啓教授 「ミリ波5Gの課題に効果歴然 超スマート社会は「事業」段階」【ソリューション特集】ゼロトラストの正しいつくり方/コロナが迫った「電話のDX」 ほか

>>詳しい目次を見る

スペシャルトピックス

チェック・ポイント・ソフトウェア・テクノロジーズ中堅中小にちょうどいいゼロトラスト

中堅中小企業にも現実的なゼロトラスト移行ソリューションをチェック・ポイントが提供する。

プロディライト電話環境のDXを実現する!
岩崎通信機のオンプレPBXとも連携

出社せずに会社宛ての電話を受けられるクラウドPBX「INNOVERA」

CyCraft AIRなぜ、AI主導型EDRなら短期解決?
インシデント対応の4つのポイント

ごく普通の企業でも、AI主導型EDRがあれば、高速に自動化可能だ。

エイチ・シー・ネットワークス月1200円から目指すゼロトラスト
ソフトSIM+SWGで全通信を制御

導入の複雑さやコスト面から足踏みしている企業の悩みを解決

IIJグローバルソリューションズDXの鍵はXDRと戦略立案にあり!

デジタル・ガバナンスの整備~アドバイザリーまでを、IIJグローバルソリューションズが支援!

シスコシステムズ通信事業者のデータセンター運用を「直感的」に!

解決策までリアルタイム提示するCisco Nexus Dashboard

ネッツワイヤレスIoT回線の最適解「ネッツワイヤレス」 多要素認証でテレワークも

「現場改革」のための法人向けモバイル回線サービス!

Keysight World 2021ドコモが語るオープンRAN普及戦略
キーサイトが10/12からイベント

6Gに向けた最新技術トレンドがテーマ!(事前登録制、参加費無料)

Splunk Services JapanSplunkで真のゼロトラスト SIEMとSOARをストーリー仕立てで

ゼロトラストの実現に必要な統合管理/分析プラットフォームを提供!

Fortinetゼロトラストで変わる常識
VPNの課題を解決するZTNAとは?

ゼロトラスト原則に基づいたリモートアクセス「ZTNA」を徹底解説!

インテル多彩なXPU製品・ソリューションで
5Gの仮想化を支えるインテル

CPUに加え、FPGA、GPU、eASICなどで5G RANの仮想化に対応!

シスコシステムズネットワーク自動化の4つの原則とは?

オートメーションを通して「人に優しい」通信インフラを実現するシスコの構想

「ところざわサクラタウン」に100Gの広帯域LANを低コストに構築KADOKAWAは大規模複合施設の
100G化をどう実現したのか

「ところざわサクラタウン」に100Gの広帯域LANを低コストに構築

TP-LinkWi-Fi 6や10Gを低価格で導入
無料SDNでネットワークの管理も

中堅中小企業のDXに必要なコストパフォーマンスを実現!

マイクロフォーカス通信キャリアの運用自動化、その鍵を握るオーケストレーションとは?

思うように成果が出ない…。ならば、プロセス全体に踏み込むべきだ

エヌビディアMWC 2021で語られた
「AI-on-5G」がもたらす価値

5GにAIを組み合わせ、高度なAIエッジ処理をシンプルに実現!

アレイ・ネットワークスIoTネットワークまで標的が拡大
ランサムDDoS攻撃の対策方法

アレイ・ネットワークスのASFシリーズで自力防衛を!

VIAVIソリューションズ5GをRANからコアまで徹底検査
オールインワンのローカル5G測定器も

E2Eのテストソリューションを提供するVIAVIソリューションズ

ウインドリバーなぜ、5G vRANにウインドリバーを採用したのか?

ベライゾンとボーダフォンが選んだ「Wind River Studio」

アイティフォーAI型EDRが侵入“後”の対応を
高速・低コストに

数週間かかる「フォレンジック」が最短3時間!

東陽テクニカあらゆる400ギガネットワーク環境をテスト

BGPの負荷試験等幅広いプロトコルテストに対応!

ネットスカウトシステムズネットスカウトシステムズが指南!
DDoS攻撃の効果的な防御方法とは

世界的に急増するDDoS攻撃。被害を最小限に食い止める方法を解説する

インテル「5G・6Gでキャリアとともにイノベーションを起こす」インテル堀田氏

ワイヤレスジャパン2021での基調講演を徹底レポート!

NVIDIA AI DAYSエヌビディア・ドコモ・富士通が
見据える「5G RANの将来」

AI時代に起こる5G RANの進化についてキーパーソンたちが語った。

NVIDIA AI DAYSソフトバンク、ドコモの5G・MECを支える技術とは

「AI-on-5G」の実現に向けて取り組むソフトバンクとNTTドコモ。

京セラ5G/L5GをデュアルSIMで使い倒す!
映像伝送、DX、電波調査がこれ1台

ローカル5Gにも対応した京セラの5Gモバイルルーターが好評だ。

ローデ・シュワルツ・ジャパンローカル5Gのテスト品質は業界トップ
サポート人員を3倍、コストも低減

ローデ・シュワルツがローカル5Gの導入を手厚く支援する。

DNPローカル5Gを支える国産SIMカード
多様なプレイヤーをコンサル力で支援

大日本印刷(DNP)がローカル5Gに最適化させたSIMを提供!

構造計画研究所ローカル5Gの円滑な導入に貢献する
2つの電波シミュレーションツール

ローカル5Gの免許申請に必要な「カバーエリア図」作成を大幅効率化!

APRESIA Systemsローカル5Gに最適化した性能
導入コストは億単位から数千万へ

ローカル5Gの導入コストを数千万円台に引き下げるAPRESIA Systems

ミクシィ低遅延伝送に挑んだミクシィ、IP映像伝送の最新規格SMPTE 2110で

ミクシィのサービス「TIPSTAR」は、低遅延のIP映像伝送技術を駆使!

キーサイト・テクノロジー5G/ローカル5G/O-RAN/C-V2Xの
最前線を解説する技術イベント

7月7日(水)・8日(木)にオンライン開催!

ホワイトペーパー
ローカル5G情報局

アクセスランキング

tc202012

「通信」の力でビジネスを進化させるbusinessnetwork.jp

Copyright(c) 2020 RIC TELECOM Co.,Ltd. All Rights Reserved. 記事の無断転載を禁じます
当ウェブサイトはCookieを使用しています。閲覧を続ける場合、プライバシーポリシーに同意したことになります。