遠隔教育・eラーニングは今やさまざまな場面で活用されており、教育事業のみならず、一般企業の社内研修や、パートナー企業・顧客向けの説明会などにも用いられている。
eラーニングは集合型教育に比べて、それを提供する側には講師派遣や教室確保のコストを省き、受ける側には場所や時間の制約がないという利点がある。その反面、両者のコミュニケーションが希薄になり、それによって受講側の意欲がそがれたりといったマイナス面も長らく指摘されてきた。だが、最新の機能を上手く活用することで、そうしたマイナス面を払拭することも可能だ。
教育業界での実例を見ながら、活用法とその効果を検証してみよう。
リアルな教室と遜色ない緊張感
研修やセミナーの効果を高めるには、その内容の質もちろん、講師が受講者の関心を常に引き付け、かつ双方向のコミュニケーションがとれる環境が必要になる。
名古屋大原学園が実施している遠隔講義では、高品質な音と映像がもたらす“臨場感”で、この課題を解決している。
同学園はパナソニック システムソリューションズ ジャパンのHD映像コミュニケーションユニットを導入し、名古屋校と静岡校をつないだ遠隔教室を開講している(下写真)。導入に携わった同社の堀田氏によれば、「“カリスマ講師”と呼ばれる方はみな、生徒の緊張感を保つことで理解度を高めようと授業を演出している。生徒とも会話を絶やさない。だから試用の際には、リアルな教室と遜色ないくらいにお互いの雰囲気が伝わるかが重視された」という。
大原学園の遠隔授業。名古屋校(右)と静岡校(左)をつなぎ、講師と受講生がコミュニケーションを取りながら授業を進行している |
講師は一面では役者と言ってよく、実力のある講師は授業に入る際、まとう雰囲気さえ変わるという。最新の映像コミュニケーションシステムは、そうした雰囲気をも伝えられる。
教室よりも活発なやり取り
受講者がPCから参加する場合は、別の手法で双方向コミュニケーションを活発化することができる。
ネットスクール(東京都千代田区)は教室を持たず、「Web講義」専業で日商簿記をはじめとする資格試験の対策講座を開催している。この教育事業を始めたのは2年余り前と後発ながら、すでに200人を超える生徒を集める講座もある。その好調の理由は、教師とのコミュニケーションの取りやすさにある。
同社のWeb講義は、ブイキューブのビジュアルコミュニケーションサービス「V-CUBEセミナー」を使っている。1つの画面内に講師映像とホワイトボード、チャット等(下写真)が配置され、ワンクリックでアンケートの実施、集計結果の表示ができる。
簿記1級担当の中村雄行講師の講義風景(左)。手前のスタッフが進行をサポートする。Web講義はタッチパネル操作で行う。1つの画面上から多彩な機能にアクセスできるため、簡単かつ軽快に操作できる |
チャットで生徒と講師が簡単に質疑応答できて、解答に時間を要するものは、控えているスタッフが調べて即座に回答する。同じ箇所に疑問を持つ生徒がその内容を共有できることも魅力だ。また、生徒同士のチャットもできるため、教室でクラスメイトが助け合うのと同じような関係ができることもあるようだ。
生徒が「わからない」ということを主張するのは、コンテンツ配信型のeラーニングでは当然不可能であり、実際の教室でも実は難しい。これが生徒を受身にし、学習意欲をそぐ原因にもなっていた。
多数の生徒と掛け合いをしながら進行するという高いスキルが講師には求められるが「生徒が疑問をすぐに解消できて、他の生徒もそれを共有できる。生徒がこうした“生々しさ”を感じられるという点では、実際の教室よりも優れているかもしれない」とネットスクール代表取締役社長の桑原知之氏は話す。
ネットスクール代表取締役社長の桑原知之氏は「どこにいても平等に学べるチャンスを提供したい」と語る |