ドコモがVoLTEの導入を急いだ2つの狙いとは?

NTTドコモが6月から導入した次世代音声通話サービス「VoLTE」には、2つの狙いがある。1つがLINEなどの通話アプリに対する競争力の強化。もう1つが3GからLTEへの移行促進による投資の効率化だ。

「VoLTE(ボルテ)はLTEを活用した高品質な新しい通話サービスです。日本ではNTTドコモが初めて6月から提供を開始します」。ドコモが5月14日に開催した夏商戦向けの新製品・新サービス発表会。その冒頭で加藤薫社長が強くアピールしたのが、同社が6月下旬から提供を開始した次世代音声通話サービス「VoLTE(Voice over LTE)」だった。

VoLTE
2014年夏モデルの発表会で加藤社長は「VoLTEの導入により通信キャリアならではの新しいダイレクトコミュニケーションが実現できる」と述べた

VoLTEは、高速モバイルデータ通信の主力技術として世界に急速に普及してきているLTEのネットワークを使って電話機能を実現するものである。3G(第3世代携帯電話)の音声通信では帯域内に一定の伝送路を設定することで通信品質を確保する回線交換方式が用いられるが、LTEはデータ通信に特化したパケット交換方式の無線通信システムであるため、VoLTEはVoIP(Voice over IP、IP電話)によって音声をやり取りする。

VoLTEは2012年から韓国などで商用化されているが、ドコモを含む世界の多くの通信事業者は、LTEのサービスエリアが3Gに比べて限定されることから、LTEスマートフォンの電話機能をCSフォールバック(Circuit Switched FallBack)という技術により3G網を使って実現している。これは端末がLTEネットワークに接続していても電話の発着信時には3Gに切り替わるようにするもので、過渡的な技術といえる。

図表1 3Gの音声通信からVoLTEへの移行
3Gの音声通信からVoLTEへの移行

今回ドコモがこのCSフォールフォールバックからVoLTEへ歩を進めた理由の1つが、海外の事業者の動きだ。

米国の大手携帯電話事業者のAT&Tモビリティは今年5月からVoLTEの導入を開始、最大手ベライゾンワイヤレスも2014年後半にVoLTEを全米で展開する計画を明らかにしている。CSフォールバックからVoLTEへという流れが見えてきたのだ。

NTTドコモのVoLTE関係者
(右から)NTTドコモ 無線アクセス開発部 無線ネットワーク方式担当 担当課長 林貴裕氏、ネットワーク開発部 IMSコア担当 担当部長 萩谷範昭氏、経営企画部 経営企画担当課長 大井達郎氏、ネットワーク開発部 IMSコア担当主査 笹部晃秀氏

NTTドコモ 研究開発センター ネットワーク開発部 IMSコア担当部長としてVoLTEの技術開発を担う萩谷範昭氏は「将来3Gのサービスが終了すれば、LTEのネットワークだけで音声を含めたすべてのサービスを提供する必要がある。VoLTEはその準備として開発を進めてきた。いつ始めるかは議論があったが、世界市場の動向を見ると今年世界各地で複数のオペレーターがVoLTEをスタートすることが見えてきたので、ここにターゲットを置いた」と、このタイミングで導入した経緯を説明する。世界の大勢に合わせながら、可能な限り早いタイミングで商用化を図ったのだ。

月刊テレコミュニケーション2014年7月号から一部再編集のうえ転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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