BYODを導入するべきなのか、それとも導入する必要はないのか――。スマートフォンやタブレットが個人に普及していくなか、大きな話題を集めているBYOD(Bring Your Own Device:私物端末の業務利用)。BYODのメリットとデメリットを鑑みて、企業はBYODのトレンドにどう臨むべきなのだろうか。
野村総合研究所(NRI) 先端ITイノベーション部 上級研究員の城田真琴氏は2013年11月22日、同社主催のイベント「ITロードマップセミナー AUTUMN 2013」で「BYOD導入の処方箋 ~BYODで実現するワークスタイル変革~」と題する講演を行った。まず今回は、NRIの調査で分かった日本企業のBYODの実態を紹介しよう。
BYODだけではなく、個人スマホの普及率も他国に遅れる日本
最初に城田氏はBYODのメリットとデメリットを次のスライドのように整理した。従業員個人のデバイスを業務に活用することで、「ワークスタイル改革やコスト削減といったメリットが期待できる一方、端末管理の複雑化や情報漏えい、プライバシーの侵害を招く恐れもある」。
BYODのメリットとデメリット |
だからこそ、BYOD導入に後ろ向きな企業も多いわけだが、よく指摘されるようにBYODに消極的なのは日本企業に顕著な特徴だ。NRIが2013年9月に実施した調査でも、BYODを「当面許可する予定はない」とした企業の割合は、日本が突出して高くなっている。「この結果を見るかぎり、日本ではBYODは進まないのでは、という思いだ」(城田氏)。
「既に許可している」は9.8%と中国・英国・ドイツ・米国と比べて、BYOD導入率が著しく低い日本。「当面許可する予定はない」とした日本企業も46.8%と、他国と比較するとBYODに否定的な企業の数が非常に多いことが分かる |
このように日本企業は、他国と比較して著しくBYOD導入が進んでいないわけだが、その背景には「そもそも私物のスマートフォン/タブレットを持っていない」という背景もある。一般社員を対象にしたアンケートでは、私物のスマートフォン/タブレットを持っていない従業員の割合は、日本が38.4%。それに対して、米国は16.3%、中国は10.8%。中国にいたっては、70%近くの従業員がBYODを実践していることも分かった。
日本、中国、米国の従業員のBYOD利用状況 |
日本はBYOD導入だけではなく、スマートフォン/タブレット自体の普及率でも遅れているのが実状だ。つまり日本では、従業員側からの“BYOD導入圧力”が、まだそれほど本格化していないともいえる。