NRIの城田真琴氏が解説BYOD導入の処方箋[前編]――調査で浮き彫りになった日本のBYODの意外な実態

野村総合研究所(NRI)の城田真琴氏が「BYOD導入の処方箋」と題して講演を行った。企業はBYODというICTの一大潮流に、具体的にどう対処していけばいいのか。今回はまずNRIの調査で浮き彫りになった日本のBYODの実態を紹介する。

日本の従業員がBYODする理由は「会社が端末を支給しないから」

ただもちろん、日本でもBYODを実践している従業員はいる。その割合はNRIの調査では21.4%。注目すべきは、この21.4%のBYOD利用者のうち、会社がBYODを「許可している」としたのは31.4%に留まったことだ。日本のBYOD利用者の大半は、勝手にBYODを実践しているのである。また、BYOD利用者の43%が、業務で使用する資料や情報を私物端末に「保存している」と回答した。「問題はここにある。5割以上の日本企業がBYODに関して明確なルールを定めていないが、これがいわゆる“シャドーIT”を招いている」

では、なぜ日本の従業員は、会社から許可されていないのに、私物端末を業務に利用しているのか。城田氏によれば、非常に興味深い結果が出ているという。

私物端末を業務に利用する理由を従業員に聞いたアンケートでは、日本の従業員の67%が「会社が端末を支給していない」ことを理由に挙げた。これは米国、中国と比べると、圧倒的に多い数字である。一方、中国や米国では、「私物端末は、会社が支給する端末より使い慣れている」「私物端末には便利なアプリが入っている」といったBYODで一般的に言われるメリットを挙げる従業員が多い。

この結果を受けて城田氏は、「日本企業の場合、『会社が端末を支給していれば、BYODを許可する必要性は少ない』という仮説が成立する」と語った。

私物端末を業務に利用する理由
私物端末を業務に利用する理由

ただ現実としてはもちろん、「端末を全員に支給できればいいのだろうが、経済的にそうはいかない企業が多い」のが実状だ。ちなみに日本企業のスマートフォン/タブレット支給率だが、タブレットは他国とそれほど変わらないものの、スマートフォンについては「5カ国の中で支給率は最低」という状況にある。スマートフォン/タブレットを従業員に支給することはできないし、BYODも会社としては許可しない――。こうした施策の結果が招くのは、シャドーITの容認という事態に当然他ならない。

スマートフォン/タブレットの支給状況
スマートフォン/タブレットの支給状況

米国では大手金融機関もBYODの導入が進展

日本企業がBYODに否定的な最大の理由の1つはセキュリティリスクにあるが、米国では最近、セキュリティには非常に厳しい大手金融機関もBYODを導入し始めている。その一例として城田氏が紹介したのは、2012年末から生産性向上を目的にBYODのパイロットプラグラムを開始した大手銀行Wells Fargoのケースだ。

「ずっとベンダーの動向を注視してきたが、我々のセキュリティニーズを満たすほど、ソリューションが成熟し、今がまさにパイロットプログラムを開始するには、ちょうどよい時期だ」とWells FargoのCIOは述べているという。また、Bank of AmericaもBYODを導入した。

すなわち、BYODのセキュリティ課題を解決するソリューションが揃ってきた今、セキュリティだけを理由にBYODの検討すらもきちんと行わないというのは、決して合理的な判断とはいえない。それは、シャドーITというセキュリティリスクを助長させるだけだ。

次回は、城田氏の講演から、BYOD導入の具体的な“処方箋”を紹介する。

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