3つの視点で理解する「MDM(モバイルデバイス管理)ソリューション」最前線【前編】

スマートデバイスの遠隔制御、端末管理を行うMDMの進化が止まらない。セキュリティ対策との連携が進展。また、アプリやコンテンツを直接制御するモバイルアプリケーション管理という新手法も登場した。

差別化が難しい――。MDM(モバイルデバイス管理)を提供するベンダーは、そう口を揃える。

MDMは、この2年で急速に進化した。機能開発のペースは非常に早く、新規参入が相次いだこともあり、激しい競争が繰り広げられている。モバイルの運用管理は今や、企業ICTにおける注目分野の1つとなった。IDC Japanの調査によれば、2011年のMDM/モバイルセキュリティ市場の企業ユーザー支出額は26億1700万円。高い成長率が見込まれており、年間平均51.5%で成長し、2016年には208億円に達すると予測している。

市場規模は飛躍的に拡大するものの、競争環境は熾烈さを増しそうだ。国内で展開されているMDMは50種以上あるとも言われ、明らかにベンダー過多の状態にある。MDM以外のモバイルセキュリティ関連ソリューションも含めて、業界の再編・淘汰が進むと指摘する声は少なくない。

また、企業のニーズも大きく変わる。スマートデバイスの運用台数が増え、利用法も高度化するためだ。当初、スマートフォンの用途は、ブラウザ経由でのメール/グループウェア閲覧が大半であり、扱うデータの質も量も限られていた。タブレット端末の主用途である電子コンテンツの閲覧も、ファイルの数、更新頻度が少ないうちは、手作業による管理で十分だった。

しかし、企業情報システムの端末としてサブ的な位置付け(PCが使えない状況での補助端末)のままでは、十分な費用対効果は望めない。スマートデバイスを前提とした業務プロセスを作り、ビジネスの効率化や俊敏性アップを実現しようとすれば、多様なアプリ、コンテンツを活用しながら、情報を強固に守れる仕組みが求められる。

あえて言えば、先行してスマートデバイスを導入してきた企業ほど、情報漏えい対策の焦点は、“端末管理”や“紛失・盗難対策”を本分とするMDMのカバー範囲外へと移る。端末管理からアプリ/コンテンツの管理へとシフトしていくのだ。

MDMの位置付けが変わる

こうした状況に対応するためのMDMベンダーの取り組みは、次の3つのトレンドで捉えられる。1つは、MDM本来の役割である端末管理・制御機能の深掘りだ。端末台数の増加、利用アプリの多様化などに伴って、MDMの機能や使い勝手がより深く吟味されるのは当然だ。多台数を管理する上での効率性や、インターフェースの使いやすさなどを再検討し、MDMを乗り換える企業も珍しくない。機能の数(種類)は、どのMDMも大差がない状況だが、より使いやすく、負荷を抑えて管理できるように、各社が工夫を凝らしている。

2つ目は、他のソリューションとの連携だ。特にAndroid向けMDMでは、アンチウィルス(AV)、マルウェア対策、電子証明書、URLフィルタリング、ファイル暗号化などのセキュリティ製品/サービスとの連携が進んでいる。これらを個別に運用するのは大きな手間となるが、MDM上で統合管理することで負荷が軽減できる。

3つ目として、アプリ/コンテンツ管理という新分野での取り組みが加速している。MDMで端末を管理するのとは別に、アプリ(の動作)を制御することで、そこで扱われるコンテンツやデータを守る新たな手法が登場してきた。モバイルアプリケーション管理(MAM)、モバイルコンテンツ管理(MCM)と呼ばれるものだ。

これらのトレンドを整理すると、(1)端末管理機能の強化、(2)セキュリティ製品との連携、そして(3)アプリ/コンテンツ管理によって、MDMベンダーが幅広いニーズに応えようとしていることがわかる(図表1)。MDMは、セキュリティ対策やMAM/MCMを各端末に徹底させ、ポリシーを遵守させるための統合プラットフォームとして位置付けられるだろう。

図表1 MDMとMAM/MCM
MDMとMAM/MCM

以下、本特集ではこの3つのトレンドについて詳しく見ていく。

月刊テレコミュニケーション2013年2月号から一部再編集のうえ転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

RELATED ARTICLE関連記事

SPECIAL TOPICスペシャルトピック

スペシャルトピック一覧

FEATURE特集

NEW ARTICLES新着記事

記事一覧

WHITE PAPERホワイトペーパー

ホワイトペーパー一覧
×
無料会員登録

無料会員登録をすると、本サイトのすべての記事を閲覧いただけます。
また、最新記事やイベント・セミナーの情報など、ビジネスに役立つ情報を掲載したメールマガジンをお届けいたします。