<連載>IoT最新事情(第4回)ソニーのLPWA「ELTRES」が狙う3分野 独自機能で用途開拓

LPWAとしては後発のソニー「ELTRES」。高速移動体通信やGNSS標準搭載といった独自の機能により、カーテレマティクスや救難サービスなど新たなユースケースが生まれている。

2019年9月に商用サービスを開始したソニー独自のLPWA規格「ELTRES」は、ソニーセミコンダクタソリューションズが通信モジュールの製造・販売を手掛け、ソニーネットワークコミュニケーションズがネットワークの構築・運用・管理を担当している。国内市場については、端末やソリューションなどのパートナー企業がサービス化し提供するというビジネスモデルを採用する。海外にも展開しており、米国や欧州、アジアなどでELTRESの通信品質を試すことができるトライアルキットの貸出を行っている。

ELTRESは見通し100km以上の長距離伝送が可能で、時速100km以上の高速移動体から安定した通信を行える。通信モジュールにGNSS(全球測位衛星システム)が標準搭載されているため、高精度な位置情報も取得することができる。国内には様々なLPWA規格があるが、「これらの特徴を活かし、競合他社にできないことで差別化を図っていきたい」とソニーネットワークコミュニケーションズLPWA営業部の新井俊介氏は語る。

ソニーネットワークコミュニケーションズLPWA 営業部 新井俊介氏

ソニーネットワークコミュニケーションズ LPWA営業部 新井俊介氏

GPS機能内蔵で安価に提供

「ELTRESの特徴が活かされる」ユースケースの中でも高い成長を見込んでいるのが、カーテレマティクスだ。

道路交通法では、商用車を5台以上(乗車定員11人以上のものは1台以上)保有する企業に対し、安全運転管理者の選任と、その管理者による運転日報管理を義務付けている。

運転日報とは、運転者が氏名や運転開始・終了日時、走行距離など、車両を使用した内容をそのつど記録するものだ。2024年には働き方改革関連法により、トラックドライバーの労働時間に上限規制が設定されることから、管理者はより正確かつ効率的に運転データを取得し管理することが求められるようになる。このため、通信システムを搭載し、様々な情報をリアルタイムに取得できるカーテレマティクスの需要が高まっているという。

ソニーネットワークコミュニケーションズは、原田工業とともにELTRESに対応したトラッキング端末を開発、すでに量産・販売を開始している。これらの端末を利用して、スマートドライブは、対象となる車両の位置情報や走行経路、安全運転状況確認などの情報を管理者にクラウド経由で送れるほか、運転日報を自動作成できるソリューションを展開している。高速移動中も通信を行えるELTRESの利点を活かしたものだ。

カーテレマティクスにおいては、ダッシュボードに置くタイプ(左)とフロントガラスに貼るタイプ(右)の2通りが提供される(原田工業による意匠登録済)

カーテレマティクスにおいては、ダッシュボードに置くタイプ(左)とフロントガラスに貼るタイプ(右)の2通りが提供される(原田工業による意匠登録済)

LTE Cat.1を採用する同様のソリューションもあるが、「ELTRESは通信モジュールにGPS機能を内蔵しているので後付けする必要がなく、LTEと比べて安価に提供できることもメリット」とソニーセミコンダクタソリューションズ システムソリューション事業部の北園真一氏は説明する。

ソニーセミコンダクタソリューションズ システムソリューション事業部 北園真一氏

ソニーセミコンダクタソリューションズ システムソリューション事業部 北園真一氏

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