「LoRaWAN全国網の“中断”後は強み活かせるEHS市場に注力」センスウェイ神保社長インタビュー

LoRaWANの全国展開を約5年前に発表して話題をさらったセンスウェイ。しかし1年後にはいったん“中断”することを決断。「最も重要なジャッジだった」と神保社長は振り返る。今注力するのは、LoRaWANの強みを活かせるEHS(環境・健康・安全)市場だ。この5年間の奮闘とこれからの展望を神保社長が語る。

――2018年4月、LoRaWANを使ったIoTネットワークサービス「Senseway Mission Connect」を全国展開すると発表し、大きな注目を集めましてから5年あまりが経過しました。現在どんな事業を展開されているのですか。

神保 最近は主に、LoRaWANの特徴を発揮できるDXソリューションサービスを厳選して提供しています。多種多様なネットワークサービスの知見と、LoRaWANに非常に詳しい会社という強みを活かし、DXソリューションサービスのためにLoRaWANを活用しています。

そもそも最初は、LoRaWANをベースにした全国網を構築しようとしたわけですが、それは日本にはLoRaWANの全国網を作っている事業者がいなかったからです。グローバルで見ると、LoRaWANはノンセルラー系で最も伸びているLPWAで、海外では全国網が構築されている国もありました。しかし日本では、どこの事業者も全国網の構築を手掛けてはいませんでした。

そこで、日本にIoTの世界を広めるため、「できるところまでやってみよう」と、日本全国に数多くのビルを所有されている三井不動産様のお力添えをいただきながら取り組み始めました。

しかし、我々はベンチャーですから、大きな資本があるわけではありません。2018年4月に記者説明会を行った時点では、全国網を構築するための本格的な資金を段階的に調達していくという計画でしたので、記者説明会の後に、新たにご賛同いただけそうな方々から随時出資をお願いしていくという予定でした。ただ実際に進めていくと、全国網構築という規模の大きさに直面することになり、あらゆるリソースが足りなくなってくるということが見えてきました。

当初は三井不動産様のビルを活用し、東京23区内などについては、屋外基地局の設置を適宜進めてきましたが、その後は計画的な屋外基地局の設置は控えていて、現在は、お客様の要望をベースとした個別エリアでのネットワークを展開していくという方針に変えております。

センスウェイ 神保代表取締役

センスウェイ 代表取締役 執行役員社長 CEO 神保雄三氏

――発表時には、2019年4月末に人口カバー率60%を目指す計画でしたが、その戦略はいつ頃転換したのでしょうか。

神保 1年後くらいだったと思います。当時は実証実験(PoC)が多く、その際にLoRaWAN対応のレンタルゲートウェイも一緒に出荷されているので、少しずつではあるもののLoRaWANのカバレッジも自然に広がっていくことになるということも分かってきました。レンタルゲートウェイの拡大によるエリア拡大を進めながら、全国網の構築のための次の資金調達をしようとも考えましたが、組織体制の構築にも時間がかかるということと、LPWAによるIoTネットワークサービス市場はまだ未成熟な段階であると判断したことから、いったん全国網の構築については優先度を下げる転換をしました。

――今振り返って、当時の判断をどう評価していますか。

神保 正しい判断だったと思っています。あのとき「全国網を作るのは今ではない」と決めたことは、センスウェイにとって最も重要なジャッジでした。

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神保雄三(じんぼ・ゆうぞう)氏

1991年4月、ニフティ入社。営業本部 ISP営業部長、営業本部長、理事 CSO(Chief Sales Officer)、執行役員ネットワーク事業部長などを経て、2017年11月にセンスウェイに入社し、専務取締役。2018年5月より代表取締役執行役員社長 CEO。現在に至る

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