総務省で「非常時ローミング」の検討会開始、DUAL eSIMの可能性浮上

Beyond 5G時代に向けて、災害や障害の発生時でも通信手段を確保できる携帯電話ネットワークをどう実現していくのか――。総務省で「非常時における事業者間ローミング等に関する検討会」が始まった。

携帯電話からの110番や119番などの緊急通報は、緊急通報全体の約6割を占めている。このように携帯電話が命をも支える重要インフラとなっているなか、KDDIの大規模障害が今年7月発生した。

この大規模障害が起きていた7月2日~3日、KDDIからの緊急通報は平時と比べて110番通報が約45%、119番は約63%減少したことが分かっている。

「携帯電話が国民生活、社会経済活動の重要インフラになっていることを踏まえれば、そのサービスの停止が与えるインパクトは極めて大きい。非常時の通信手段を確保するため、分野横断的に英知を結集する必要がある」

寺田稔総務大臣は9月28日、「非常時における事業者間ローミング等に関する検討会」の第1回会合でこのように挨拶した。KDDIの大規模障害を発端に議論が本格化した、災害時や障害時等の非常時における事業者間ローミングの実現に向けた検討がいよいよスタートした。

この日は、事務局を務める総務省が検討項目等について整理するとともに、電気通信事業者協会(TCA)や携帯電話事業者(MNO)4者がそれぞれの考えを述べた。
寺田稔総務大臣

検討会の冒頭で挨拶する寺田稔総務大臣

早期実現を目指す緊急呼のローミングにも課題

TCAは、技術的な実現可否の観点から非常時の事業者間ローミングについて報告した。なお、以下は4GとMNO間について説明したもので、5G NRやMVNOについては今後検討を進めていくという。

まず110番通報等の緊急呼のみのローミング(LBO方式)の場合、次のスライドのような構成イメージになるという。

緊急呼の見のローミングの場合の構成イメージ

緊急呼のみのローミングの場合の構成イメージ。呼び返し通話には対応できない

最も実現が容易とされている事業者間ローミングの形態だが、障害が発生した事業者のHSS(Home Subscriber Server)への位置登録の実施のほか、障害発生側で電波を吹いている場合はユーザー側での端末操作も必要になる。また、緊急通報中に気を失って電話が切れてしまった場合などに必要な「呼び返し通話」も不可だ。

KDDIをはじめ最近の大規模障害はすべてコアネットワークが原因だが、せっかく事業者間ローミングの仕組みが実現しても、コアネットワークの障害箇所によってはローミングできないという課題もある。

「まずはスピードを優先して緊急呼のローミングからスタート」というのが構成員やMNOの共通認識だが、TCAのこの説明によると、ハードルが一番低いとされる、呼び返し通話なしの緊急呼のみのローミングにおいても課題は少なくないようだ。

構成員の1人からは、「TCAの説明は3GPP標準に沿ったもの。緊急通報については現在も日本独自の仕様を取り入れている。近年発達している転送電話の仕組みを活用するなどして、できれば呼び返し通話は実現したい」との要望が出た。

ユーザー側での端末操作が必要な問題への対処方法としては、「専用アプリ等が必要になる可能性がある」とTCAは語った。

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