OKIは2020年9月29日、「AIエッジ・カンファレンス&ソリューションコンテスト」を開催した。同イベントにはOKIのAIエッジコンピューター「AE2100」を活用した、様々なソリューションを提供する企業が集まった。AE2100は、耐環境性の高い筐体にディープラーニング用プロセッサーなどを搭載しており、センシング現場でのAI推論を実現できる。あらゆる種類のセンサーを収容する多種多様な通信インターフェースへの対応も特徴だ。
当日は基調講演およびAIの有識者を招いたパネルディスカッションからなる1部と、パートナー19社がソリューションを発表し、1位から3位までの入賞者を決定するコンテストの2部構成で開催された。
現場向けAIエッジがない最初のプログラムは、OKI 取締役専務執行役員 情報通信事業本部長の坪井正志氏の「OKIのAIエッジ社会実装と新たな取り組み」と題した基調講演。AE2100開発の背景について「OKIでは3~4年前から、IoTやAIなどの先端技術を用いたDXに取り組み、社会実装を目指してパートナーとPoCを進めていた。しかし、進めれば進めるほど1つの課題に直面した」と坪井氏は振り返った。
OKI 取締役専務執行役員 ソリューションシステム事業本部長の坪井正志氏
その課題とは、膨大なデータをどう処理するかだ。「典型的なIoTの構成では、端末でセンシングしたデータをクラウドで処理する。それを社会全体でやると、ネットワークもクラウドも負荷に耐えられない。さらに、社会課題の解決にはリアルタイム性が求められるケースも多かった」と坪井氏は語った。そこで、屋外を含むあらゆるセンシング現場に設置できる耐環境性と、高速なAI処理を両立するハードウェアを探すことにした。しかし、市場では見つからず、「他社からもぜひ欲しいという声があった」ことから、OKIでの開発に踏み切ったという。
AE2100は現在、様々な領域でAIエッジのユースケースを実現している。「エッジAIとクラウドが5Gで繋がれば、高度なスマートシティも実現できる」と坪井氏は意気込んだ。
AE2100の外観。LTEや無線LAN、PLC、920MHz帯無線の「SmartHop」や
イーサネットなど多種多様な通信方式に対応している
“知性”にはまだ遠いAI続いて、テンソルコンサルティング 代表取締役 工学博士の藤本浩司氏の基調講演。「AIはどこまでができる仕組みになっていて、どこからは人間が管理しないといけないか、本質的なところを解説したい」と藤本氏は講演テーマを説明した。
テンソルコンサルティング 代表取締役 工学博士の藤本浩司氏
現在、世に普及しているAIは、「あくまで人間が事前に設計したアルゴリズムを繰り返す」仕組みであり、特定のタスクに特化したものとなっている。「データと正解を与えられれば、そこから因果関係や相関関係を推論するようなことは可能になっている。知性を持っているというには少なくとも、どういう問題を解決すべきかをAI自身が決められる能力や、目的に合わせて正解や不正解を人間に頼らず判断する力、そして正解や目的が定まった後もどの程度の範囲まで情報を収集するかを決定する能力などが必要だ」と藤本氏は述べた。