NTTは2020年9月29日、NTTドコモ(以下、ドコモ)の完全子会社化について記者会見を開催した。
会見の冒頭、NTT 代表取締役社長 澤田純氏は「情報通信市場では固定通信、移動通信の垣根が無くなっている。それとともにグローバルプレイヤーを含め、通信レイヤーを超えた多面的かつ多層的な市場競争が展開されつつある。また新型コロナウイルス感染症拡大を受け、アフターコロナの社会を展望するとリモートワールド、分散型社会が基本となる社会が見えている。さらにグローバリズムが変質し、ニューグローカリズムが台頭する社会になるなど大きな変化が想定される。NTTグループとしてはこうした世界的に大規模な経営環境の変化に対応する必要がある」と情報通信市場の背景を説明。
NTT 代表取締役社長 澤田純氏(左)、NTTドコモ 代表取締役社長 吉澤和弘氏
そうした環境下でNTTグループが成長、発展していくためには「グループ横断でのリソース・アセットの戦略的活用と意思決定の迅速化が不可欠」とし、今回のドコモ完全子会社化を決定したという。
NTTの中長期的な成長・発展に向けた方向性これらの実現のためには
「グループ横断でのリソース・アセットの戦略的活用と意思決定の迅速化が不可欠」という
「完全子会社にすることを決定した目的はドコモの競争力強化と成長。ドコモはNTTコミュニケーションズ(以下、コム)やNTTコムウェア(以下、コムウェア)などのグループ会社の能力を活用し、新たなサービス・ソリューション、6Gを見据えた通信基盤を移動・固定融合型で推進し、上位レイヤービジネスまでを含めた相互ICT企業への進化を目指してほしい。ドコモの成長によってNTTグループ全体の成長を目指す」(澤田氏)
また、「コムとコムウェアについては、NTTドコモグループへ移管することも検討している。しかしどのような形で組織を整理するかはこれから議論するところ。吸収合併するか否かについてはまだ検討していない」とした。
ドコモ完全子会社化の目的
ドコモの完全子会社化による主な取り組み。研究開発においては
「6G時代のコアネットワークやIOWN構想、O-RAN、VRANに係る研究開発の推進」を掲げる
NTTグループとの連携で3つの取り組みを強化
NTTドコモ 代表取締役社長 吉澤和弘氏は、今回の変革によってドコモが目指す姿として「より便利で使いやすいサービスをいち早く創出し、お客様の期待に応えること。社会や産業のデジタル化、スマート化の実現を通じて社会課題実現に貢献すること。そして6GやIOWNなど次世代ネットワークの早期実現によって、日本のICT産業の更なる発展、国際競争力の向上に貢献していく。これらが2020年代、2030年代のドコモの果たすべきことだ」と話した。
さらに今回の完全子会社化によって、「ドコモはNTTグループの中核を担い、全てのお客様のフロントとしてトータルサービスを提供する存在となる。コンシューマー、法人を問わず、またモバイルネットワークだけでなくソリューション、アプリケーションまで含めてお客様のニーズにトータルで対応できる会社に自らを変革していく。そのためにサービス創出力、提供力を徹底的に強化するとともに、通信ネットワークの競争力をさらに高める必要がある。NTTグループの中核としてNTTグループ各社、例えばコムやコムウェアが持つアセットやリソースを活用し、ドコモが持つ事業基盤を強化することが最短かつ最も確実な方法だと判断した」という。
NTTグループとの連携強化については、具体的には大きく3つの分野での取り組みを考えている。
1つ目は「通信事業において、ネットワークの高度化、効率化によりコスト競争力を強化する」こと。グループ各社のネットワークの連携強化によりモバイル・固定・Wi-Fiを融合したネットワークやサービスを提供していく。また、各社の通信設備の活用やオペレーション、設備などと協調することでより安定的でコスト競争力のある高いネットワークを実現する。これにより、「多様な顧客のニーズに応えられる新たなコミュニケーションサービスや、低廉で使いやすい料金の提供を実現する」という。
通信事業の競争力強化