100万円から作れる!Amazon Go型店舗――IoTで省人化×顧客体験を追求

デジタル技術を駆使した店舗が続々と登場している。省人化や顧客体験の追求などが目的だ。NECはAIとIoTを駆使した省人型店舗を実現。クラスメソッドは100万円からAmazon Go型のカフェを設立した。

「Amazon Go」が2018年1月にシアトルでオープンしてから、約1年半が過ぎた。日本でも各地でIoT技術などを活用して、省人型店舗を運営する試みが活発だ。

NECは2018年12月17日、セブン-イレブン・ジャパンとの実証実験として、AI・IoT技術を活用した「省人型店舗」をオープンした。東京都港区の三田国際ビル20Fのセブン-イレブンを、NEC社員約4000名が実際に利用している。開店作業や品出しなどの人手がかかる作業は同ビル地下1Fにあるセブン-イレブンのスタッフが行い、多くの業務を自動化している。

「狙いの1つは、新たな市場としてマイクロマーケット(小規模商圏)を開拓することだ」とNECの石井健一氏は語る。

マイクロマーケットとは、「工場やオフィスビル内などに出店する小さな店舗。通常の店舗ほどの売り上げが見込めないため、できるだけコストを抑え、人手を減らして展開する必要がある」(石井氏)。

実証のポイントは大きく2つあるという。1つは省人化。24時間体制の見直しを求められるなど人手不足が深刻化しているコンビニだが、デジタル技術で活路を開く。

2つめは新たな顧客体験の提供だ。「(顧客体験の)評価は難しいが、例えば手ぶらで買い物に行ける、顔認証ですべて済んでしまう、という体験を提供していく」と石井氏は語る。

NEC 第一リテールソリューション事業部 第二インテグレーション部 シニアエキスパート 石井健一氏
NEC 第一リテールソリューション事業部 第二インテグレーション部
シニアエキスパート 石井健一氏

実証店舗の仕組み実証店舗の仕組みだが、入店時に入口のカメラと顔認証システム「NeoFace」で、事前登録したNEC社員のデータと照合する。この処理は一瞬で終わり、「ほぼ自然なスピードで入店できる」と石井氏は胸を張る。

店内では軽食やスナック、弁当、ドリンクなどを中心に販売。乳製品などは無人店舗に置いた前例がないため、保健所と協議して自動販売機での提供となっている。

会計はセルフレジで行う。来店者自身が商品のバーコードをスキャンし、顔認証か社員証で決済すると給与天引きで精算される。

実証店舗の仕組み

センサー/カメラは有線でこの店舗を支えているのが、無数のネットワークカメラとセンサーだ。天井には10以上のネットワークカメラが設置されている。石井氏は「バックヤードへの侵入を検知するための映像解析も行っている」と説明する。

映像は遠隔からの売り場確認にも活用している。地下1Fのスタッフが棚の欠品状況などを確認しやすいよう、魚眼レンズのフルHDカメラを採用した。

センサーについては、「冷蔵設備の温度管理や、コーヒーマシンの故障検知、内部の豆と水の量の計測に用いている」(石井氏)。

カメラとセンサーは有線LANでつなぎ、インターネットVPN経由でNECのデーターセンターにデータを集約。有線LANを採用する意図について、「店内には電子レンジがあるため無線は不安定になる。映像解析では帯域の問題もある。また、給電するためにPoEを使いたかった」と石井氏は解説する。

このほか、販売実績や天気に基づいたAIによる発注提案システムなども導入している。実は「ショールーム的要素もあり、今後展開するだろう店舗に比べるとコストはかかっている」というが、それに見合った成果は出ている。

例えば省人化については「通常の体制で店舗を運営する場合に比べて、1/4から1/5の人手で回せている」(石井氏)。

また、当初はすでにセブン-イレブンがある同ビルに出店することで顧客の奪い合いも懸念されたが、地下1階の売上は実験開始後も落ちてない。一番の目的であるマイクロマーケットの開拓に成功したのである。

月刊テレコミュニケーション2019年7月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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