「5Gは大きな技術革新を伴うので、まず技術が出揃うことが前提。そのうえで5Gを簡単に利用できるようなソリューションも必要になる。初期フェーズでは成長は緩やかで、その後に加速する」
IDC Japanリサーチマネージャーの小野陽子氏は最初に、5G普及の全体感をそうまとめた。
5G市場成長の概観。IDC Japanは初期フェーズでは緩やかな成長を予測する
超高速・大容量通信、超低遅延・高信頼通信、大量端末接続が5Gの特徴だが、それらを活かしたユースケース開拓も「長丁場になる」(同氏)。徐々に展開されていく5Gインフラを使いながら、ユースケースを高度化していく流れになると予測。ロボット・建機の遠隔制御に代表される“5Gならでは”のユースケースの搭乗は2024から25年ごろになるだろう」とした。
IDC Japan リサーチマネージャーの小野陽子氏(左)と、
シニアマーケットアナリストの菅原啓氏(右)
インフラ、デバイス、サービスそれぞれの見通しは
一般消費者が5Gを利用できるようになるには、基地局等のインフラ、5G対応デバイス、そして通信サービスの3要素が揃う必要がある。それぞれの普及予測は、次の通りだ。
5G通信インフラについては、展開が加速するのが2021年からで、2023年にはモバイルキャリアのネットワーク投資のうち約8割が5G向けになるとした。「全国くまなくではなく、概ね5Gが利用可能になるのは2025年頃」というのがIDC Japanの見通しだ。
5G向けインフラ市場予測
その理由については、4GやWiFi、ローカル5G、固定通信サービスといった「他の通信技術との競争、あるいは補完関係で発展していくと見るのが妥当」とした。特に産業用途においては通信技術に求められるニーズが多様なため、こうした他の通信技術との組み合わせで利用されていくと小野氏は話した。コンシューマ向けサービスとしても、当面は4Gとのハイブリッドサービスとして提供される。
携帯電話端末については、2023年時点で「出荷台数の3割弱」が5G対応端末になるという。最初に登場する5Gスマートフォンは「ハイエンドかつ高額」なうえ、キャリアの端末購入補助も厳しくなっている状況から、こちらも緩やかな成長を予測した。
国内5G携帯電話の出荷台数見通し
5G通信サービスの契約数も、この5G対応デバイスの出荷数に連動する。現在、MVNOやIoT向けを含めて約2億回線ある契約数は2023年時点で2億5000万弱まで伸びると見るが、そのうち5G契約が占める割合は約3300万回線で、全体の13.5%と予測した。
国内5G通信サービスの契約数予測
料金プランについては、海外キャリアの先行例と同様に、容量無制限プランで提供が始まると見る。「海外では、5Gプランは4Gの最もハイエンドなプランにくっついてくる。国内でも同様になると考えている」という。