今から3年前の2015年9月、シスコシステムズは従業員100人以下の中小企業(SMB)をターゲットとした新ブランド「Cisco Start」を立ち上げた。日本国内の中小企業向けに、低価格かつ簡単に扱えることをコンセプトとしたルーター/スイッチや無線LANアクセスポイント等を開発。ルーターを4万円台から発売するなど、その値付けはSMB向けネットワーク機器市場にインパクトをもたらした。
シスコはその後もCisco Startシリーズのラインナップを拡大し、コラボレーションサービス「Cisco WebEx」やセキュリティサービス「Cisco Umbrella」といったクラウドサービスも追加。売上も順調に伸ばしており、デイヴ・ウェスト代表執行役員社長によれば、2018年度は2016年の6倍の売上を記録したという。
シスコシステムズ 代表執行役員社長のデイヴ・ウェスト氏(左)と、
執行役員 SMB・デジタル事業統括 兼 東京2020マーケティング担当の鎌田道子氏
専任のIT担当者がいない中小企業の現状に合わせて、設定や管理の仕組みを簡素化するなど製品・サービス自体に工夫を凝らしたことに加えて、「日本語化などのローカライズと、しっかりとしたサポートの提供」が成功につながったとウェスト氏は述べた。
そして今回、SMB市場の攻略をさらに推し進めるため、シスコは新たな販売体制を整えた。それを率いるのが、SMB・デジタル事業統括 執行役員(兼 東京2020マーケティング担当)の鎌田道子氏だ。記者説明会の冒頭、同氏はクラウドサービスのポートフォリオを拡充していくと方針を述べ、「特にCisco Umbrellaの販売・サポート体制を強化する」と話した。設定・管理画面等の日本語化を進めることで、「中小企業へのクラウドセキュリティ導入を支援する」という。
Cisco Startシリーズに追加する新製品・サービス群
また、このCisco Umbrellaの日本語版だけでなく、ビデオ会議端末「Cisco WebEx Room Kit Mini」、ルーター製品「Cisco 900-J」などもランナップに追加。クラウド管理型のネットワーク製品「Cisco Meraki」シリーズにも、スイッチ「Cisco Meraki MS」と監視カメラの「Cisco Meraki MV セキュリティカメラ」を加える。
■10名以下の小オフィスや小売・飲食店を開拓
そして、今回発表したSMB向け新戦略の目玉が、従業員25人以下の小規模事業者をターゲットとした新規事業の立ち上げだ。これまでCisco Startシリーズが対象としていた顧客層と比べてもより規模が小さく、ITに不慣れであると考えられる層の開拓を目指す。鎌田氏は「10名以下のオフィスや店舗でもすぐに使えるような価格で提供する」と述べた。
25名以下の企業をメインターゲットとするWi-Fiアクセスポイント「Meraki Go」
その新製品の1つが、Cisco Merakiの新ラインナップである「Meraki Go」だ。設定・管理のすべてをスマートフォンアプリで行える簡便さが特徴で、初期設定はもちろん、ネットワーク利用状況の確認やゲストWi-Fi、セキュリティ設定なども、アプリ画面で項目を選んでいくだけで簡単に行える。
例えば、社員にWi-Fiのパスワードを配布する場合にも、スマートフォンでQRコードを読み取るだけで設定が完了。社員のPCに対してメールで配布する機能もある。