ソフトバンクは2019年1月29日、5G-NRの無線伝送技術に基づく車車間通信の屋外フィールド試験を実施し、1ms以下の低遅延通信に世界で初めて成功したと発表した。
今回の実証試験は、トラックの隊列走行の早期実現に寄与するもの。隊列走行とは自動運転の一種で、有人運転の先頭車両を自動運転の後続車両が追従する。
1月29日~30日に都内で開催された「5G国際シンポジウム2019」において、ソフトバンクの吉野仁氏は、隊列運転を「日本の課題である人手不足、ドライバー不足を解消するもの」と紹介した。後続車両のドライバーが不要になるからで、このため運送会社のコスト構造も変化。さらに隊列走行では、いわゆる“スリップストリーム”によって空気抵抗が減るため、燃費も改善する。「車間距離が4mだと15%、2mだと25%燃費が改善する」と吉野氏は説明した。
隊列走行のメリット
この隊列走行で課題となるのが遅延時間の短縮だ。「先頭車両がブレーキを踏んだ」といった情報が、後続車両に伝わるのが遅れれば、先頭車両に追突してしまう。
吉野氏によれば、時速80kmで走行している場合、100msの遅延は2.2mに相当する。しかし、1msの遅延で済めばわずか2.2cmだ。隊列走行では、エンドツーエンドで遅延時間10ms以内が目標となっているが、無線区間は1ms以下、エンドツーエンドでも4ms以下で車車間通信が行えた。
なお、5G-NRによる端末間の直接通信は「Sidelink」と呼ばれ、「2019年12月に標準化される予定」(吉野氏)だという。
実証実験のイメージ