<特集>映像IoT映像IoTで「空間の知能化」――店舗や工場、駅など事例続々

カメラ映像をAIが分析して、空間内の人・モノの動きや変化を丸わかりにする――。そんな映像IoTの活用が小売、製造、交通など様々な分野に広がっている。意外と導入が容易なことも普及を後押ししそうだ。

Ambient Intelligence(環境知能)という言葉を聞いたことがあるだろうか。

「環境そのものに知能が埋め込まれる」ことを意味する、1990年代末に生まれたキーワードだ。人・モノの動きや環境の変化等をセンシングして可視化したり、適応するアクションを取ったりすることで人の活動を支援しようという考え方である。

90年代末には夢物語に過ぎなかったかもしれないが、IoTが本格化した現代の私達には十分に実現可能な目標だ。

ただし、1つ大きな課題がある。我々が生活し仕事をする空間にセンサーをばら撒き、かつネットワークにつなげなければならない。小型軽量・低コストのセンサー、LPWAのように低料金な通信サービスが登場してはいるものの、それにはやはり膨大な時間とコストがかかる。

無数のセンサーはいらないこの手間を省いて一足飛びに空間全体をセンシングできるようにする可能性を持つのが「映像」だ。

知能化したい空間をカメラで撮影し、その映像をAIに分析させれば、写る人・モノの状態や動きを認識することができる。カメラをセンサーとして使う「映像IoT」である。これなら、人やモノにいちいちセンサーを取り付ける必要はない。

温度や湿度といった指数も、温度計などの表示装置があれば、それを写してAIに読ませればいい。わざわざ通信機能付きの計測器を作る必要はないのだ。人が目で見て認識・判断していることは、ほぼ映像IoTで代替できる。しかも、人がやるよりはるかに高速かつ正確だ。

こうしたことは、映像の高精細化やカメラの低廉化、画像認識AIの進化といった様々な要素が寄り集まることで可能になった。通信技術の発展もその1つだ。無線通信によって大容量の映像データを伝送できるようになったことでカメラの設置場所の制約が取り除かれ、屋内でも屋外でも映像IoTを使って空間を知能化することができる。

月刊テレコミュニケーション2018年8月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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