ローミング料金を気にせず、旅先でもスマートフォンを存分に活用したい――。海外からの観光客にとって願ってもない新たなサービスが、日本でも広まりつつある。
2017年7月に香港のMango International Groupとシャープの合弁企業として設立されたhandy Japanは、ホテルの客室にアメニティとして設置するスマホのレンタルサービスを提供している。
handyはホテルの内線電話としての機能はもちろんのこと、国内・国際通話やデータ通信が無料・無制限で利用できるサービス。利用料は宿泊料に含まれるので、宿泊客は特に費用を払う必要がない。
宿泊客は電話以外にも外出先にスマホを持ち出し、撮影した画像をインスタグラムやFacebookに投稿したり、ホテル周辺の観光スポットやお薦めのレストランまでの経路をGoogleMapで検索するといった使い方が可能だ。海外から訪れる観光客が自前のスマホを日本でも使おうとすると、国内向けSIMカードまたはポータブルWi-Fiの用意、あるいは国際ローミングの利用が必要と、手間やコストがかかる。handyを使えれば、そうした煩わしさから解放される。情報はチェックアウト日に自動消去されるほか、利用者が好きなときに消去できるので、安心して使うことが可能だ。
日本政府観光局(JNTO)によると、2016年の1年間に日本を訪れた外国人観光客は約2404万人と過去最多を記録した。彼らの日本の「おもてなし」に対する不満として必ず上位に挙がるのが、「無料Wi-Fiスポットが足りない」ことだ。2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、地方自治体などが中心となりアクセスポイント(AP)の設置を急いでいるが、海外と比べるとまだまだ不足している。その点、handyはNTTドコモのLTEネットワークを使用したMVNOと契約しているので、LTEのカバーエリアであれば全国どこでもほぼつながることができる。
一方、ホテル側はhandy Japanに対し、1台あたり月額980円を支払う。handy Japanはこうしたレンタル収入と、handyに配信する広告収入の2本立ての収益構造となっている。
「旅行中はどうしても財布の紐が緩みがちになるため、このタイミングに合わせて広告を打ちたい企業は多い。handyは旅行客の現在地や時間帯に合わせて最適なプッシュ広告を表示する“タビナカ”メディアを目指している」とhandy JapanでCMO(Chief Marketing Officer)を務める野本歩氏は話す。
handyは旅先の観光スポットやグルメ情報など観光客が求める“タビナカ”の情報も提供する
handyは現在17カ国、600のホテルで利用されている。なかでも普及率の高い香港では全客室の50%以上に入っているが、すでに広告収入がレンタル収入を上回っているという。handy Japanでも広告収入をメイン、レンタル収入をサブと位置付けたビジネスモデルを展開する計画だ。