「2023年には5G加入が10億に達する。その時点での人口カバー率は20%以上」
エリクソン・モビリティレポートの2017年11月版では、5Gの展開をそう予測している。
エリクソン・ジャパンCTOの藤岡雅宣氏
地域別に見ると、2023年時点で最も5Gが普及しているのは北米で、それに次ぐのが日本・韓国・中国等の北東アジアだ。「無線方式別のモバイル契約数」の予測では、北米は37%が、北東アジアは34%が5G契約になるとしている。エリクソン・ジャパンでチーフテクノロジーオフィサー(CTO)を務める藤岡雅宣氏は、「この2つの地域が突出している」と話した。
では、5Gは今後どのように進展していくのか。標準化、トライアル・商用導入、そしてサービス展開についてまとめたのが下の図だ。
5Gのロードマップ
最初の商用サービスは、北米で2017年末に提供が始まるFWA(FWA(Fixed Wireless Access:固定無線アクセス)で、これはFTTHサービスの代替を狙ったもの。藤岡氏によれば、「当初はプロプライエタリなシステムで始まるが、徐々に標準化されたものに移行していくだろう」という。
その後韓国、そして日本・中国で、本格的なモバイルでの利用が始まる予定だ。2018年の平昌五輪で商用化前のデモが行われた後、同年末から19年にかけて商用サービスが開始。2020年には日本と中国で商用サービスが始まる。
なお、2020年の段階では「今のスマホの延長線上に当たる」(藤岡氏)、5Gフェーズ1の商用サービスがスタート。その後、2022年ごろからミッションクリティカルなアプリケーション向けの超高信頼・超低遅延通信を含む「5Gフェーズ2」のサービスが始まるという予測だ。
5G導入形態は日韓と中国で異なる
もう1つ、5Gの展開で注目される点がある。5Gの無線アクセスには大きく2つの方式があり、どちらを採用して5Gのエリアを展開するのかは国・地域によって分かれる。
現在、多くのキャリアが導入しようとしているのが「Non-Standalone」(NSA)と呼ばれる形態だ。現行のLTEネットワークを進化させるかたちで5Gの新しい無線アクセス技術「New Radio for 5G」(以下「NR」)を導入するものだ(下図参照)。この形態では、NRの制御信号もLTEで送信し、NRとLTEの両方でデータ送信を行う。
5Gの無線アクセス方式
一方、NRを、LTEとは独立したシステムとして導入する形態が「Standalone」(SA)である。もちろんLTEとは相互連携するが、5Gの設備を展開する「最初からNRを入れる」ため、ネットワーク全体の構成も、NSAとSAでは若干異なってくるという。
NSAでは、LTEのコアネットワーク設備であるEPC(Evolved Packet Core)に機能を付加する「Option 3」と呼ばれる方式を用いる。これにより、NRの制御信号をEPC側で送るのだ。藤岡氏によれば、「日本や欧州はNSAでだんだんと5G化していく」。この場合、既存のLTE設備を提供しているベンダーが、5Gにおいても引き続き選定される可能性が高い。
5Gのネットワーク構成
一方、SAを採用するのが中国の通信事業者だ。こちらはEPCに依存せず、5Gのパケットコアである「NXGC(Next Generation Core)」とNRをつなぐ「Option 2」を用いる。
さて、今回発表されたエリクソン・モビリティレポートでは、このほかにも様々な調査・予測、分析が行われている。次に、注目が集まる「セルラーLPWA」の動向と予測について紹介しよう。