無線LANなどで使われている5GHz帯を携帯電話のシステムで利用できるようにする新技術「LAA(Licensed-Assisted Access using LTE)」への関心が、日本でも高まってきた。
NTTドコモは、2014年8月に北京でファーウェイとLAAの協同実験を行い5GHz帯でのLTE通信に成功したと発表した。2020年に商用化が計画されている5G(第5世代移動通信システム)の運用周波数を確保する手段としても注目されている。LAAはいつごろ実用化され、移動通信市場にどのような影響を与えるのか――。
LAAとLTE-Uで世界をカバー5GHz帯や2.4GHz帯などの周波数帯は、無線LANなどの機器が無線局免許を取得せずに利用できることから「アンライセンスバンド」と呼ばれている。LAAは、日本ではすでに携帯電話システムの主力となっているLTE/LTE-Advanced(以下LTEと表記)のスペックを、日本や欧州でアンライセンスバンドを使う機器に搭載が義務付けられている干渉回避技術の「LBT(Listen Before Talk)」などに対応させ、アンライセンスバンドで運用できるようにしようとするもの。携帯電話システムの標準化組織「3GPP」で2016年春に固まる次の技術仕様書「Release13」の一部として規格化される。
図表 LAAのイメージ |
3GPPでは、(1)LAA単独でアンライセンスバンドを利用するのではなく、必ず2GHz帯などの携帯電話用周波数帯とのキャリアアグリゲーション(CA)を組んで運用し、通信制御などは携帯電話周波数帯側で行う、(2)無線LANになるだけ干渉を与えないようにLAAを小セル基地局で運用するなどの基本コンセプトを固めている。
実は、LTEでアンライセンスバンドを利用するための技術規格には、LAAの外にもう1つ、米クアルコムが主導するLTE-U(LTE-Unlicensed)があり、アルカテル・ルーセント、エリクソン、クアルコム、LG、サムスン、ベライゾンが参加する推進組織「LTE-Uフォーラム」が規格策定や商用化に向けた活動を行っている。
では、LAAとLTE-Uは、どのような関係にあるのか――。クアルコムの日本法人で標準化担当部長を務める城田雅一氏は、「欧州や日本ではアンライセンスバンドで帯域を共用するための技術規格が法律で厳格で規定されているが、北米などでは細かな規定はなく、既存のシステムと共存できることが実証できれば導入ができる。そこでLTE-Uフォーラムで北米などでの導入を想定した規格を作り、3GPPでの標準化を待たずに導入できるようにしようとしている」とLTE-Uの位置付けを説明する。
クアルコムジャパン 標準化担当部長 城田雅一氏
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日本の5GHz帯用機器の技術基準は世界で最も厳しいとされ、4ミリ秒間送信したら一旦電波を止め、キャリアセンスを行ってから通信を再開するといった高度な制御が義務付けられている。LAAでは、これらの仕様に対応するためLTEの仕様の大幅な変更が必要になると見られる。これに対し、LTE-UではLTEに比較的に容易に実装できる別の技術(CSMA/CSAT)で無線LANなどとの共存を実現し、早期の商用化を目指しているのだ。