ホリプロ(本社:東京都目黒区)は1960年の設立以来、山口百恵をはじめ数々のスターを輩出してきた大手芸能事務所。現在も約400人の所属タレントが、テレビや映画、雑誌などで活躍している。
ホリプロの社員はタレントとともにスタジオや撮影現場で過ごす時間が長く、外から社内の基幹システムを利用したいとのニーズが多く聞かれていた。特に約30名いるチーフ以上の役職者は、社内システムの承認のために深夜でも帰社しなければならず、不便さを感じていたという。折しも今年2月、全社員にiPhone、また役職者向けにiPadが配布されたのを機に、業務効率化の一環として社外からiPad上で承認業務が簡単にできる仕組みの構築が喫緊の課題となっていた。
コスト負担も少なく導入そうした状況を受けて、同社は今年7月、インフォコムのクラウド型リモートアクセスサービス「S-Proxy」を導入した。
S-Proxyは、外出先で利用するスマートデバイスから、社内ネットワーク上のWebシステムへの通信を既存のネットワーク構成への変更を加えることなく実現するサービス。社内にエージェントとなるサーバーを1台置くだけで、すぐに利用を開始することが可能だ。また、利用するために必要な設定や管理はブラウザ上で簡単に行える。
さらに、閲覧対象がHTTPサーバーであっても、設定一つで通信経路をHTTPSのSSL通信に変更することが可能。アクセスを許可するデバイスに証明書を配布し、通信時にエージェントサーバーでチェックすれば、なりすましアクセスを防止できる。
図表 S-Proxyのシステム概要[クリックで拡大] |
ホリプロ 業務本部 総務部 情報システムグループ チームリーダーの柾田和哲氏は、「社内システムの設定をできるだけ変更せずに、手軽にかつセキュアにアクセスできるという観点からVPNをはじめさまざまなサービスを検討したが、専用機器や回線を用意しなければならなかったり、初期費用が高額なものがほとんどだった。S-Proxyはそれらの必要がなく、しかも安価に導入できるところに魅力を感じた」と選択の理由を説明する。
S-Proxyは専用アプリをワンタッチすればブラウザが立ち上がり、基幹システムのログイン画面が表示されるので、社員のITリテラシーに関係なくなじみやすい点も決め手となった。ホリプロでは、2年前に基幹システムや社内のイントラサイトなどをAWSのクラウドサービスに移行している。AWSと連携した仕組みの構築への期待もあったという。
S-Proxyの初期費用は不要。月額費用は、業務外サイトの閲覧制限をかけるブラウザアプリ「CLOMO SecuredBrowser」を含めても590円(税別)と国内最安水準となっている。VPNや仮想化を使うサービスでは、場合によっては初期費用だけで数千万円かかることもあるだけに、経営層の賛同を得やすく、導入が決まったという。
ホリプロ 業務本部 総務部 情報システムグループ チームリーダーの柾田和哲氏(左)とシーイーシー システムインテグレーションBG ビジネスクラウド事業部 第二サービス部 主査の塚本嘉正氏 |
2004年以降、ホリプロの情報システムの構築・運用を担当しているシーイーシー システムインテグレーションBG ビジネスクラウド事業部 第二サービス部主査の塚本嘉正氏は、柾田氏からS-Proxyについて相談を受けた際、「社内システムにストレスなく入れる仕組み作りという課題を解決できると感じた。セキュリティ面に不安はあったが、CLOMO SecuredBrowserとの組み合わせにより端末の個体認証が可能なほか、S-Proxyの証明書が入っていない端末からアクセス制限をかけたり、端末上にデータが残らないことで問題ないと判断した」と話す。