KDDIが3.5GHz帯LTE-Advancedのキー技術「C/U分離」の実証実験

トラフィック対策の有力手段である小セル基地局の展開で問題となるのが、頻繁なハンドオーバーの発生による通信品質の低下だ。その解決策となる「C/U分離技術」の実証実験をKDDIが報道関係者に公開した。

KDDIは、携帯電話事業者への年内の割当が見込まれているLTE-Advanced向けの新周波数帯3.4-3.6GHz帯(以下3.5GHz帯)への導入を計画している新技術「C/U分離」の実証実験設備を栃木県のKDDI小山ネットワークセンター内に構築している。2014年3月28日、その実証実験のデモンストレーションを報道関係者に公開した。

3.5GHz帯には最大で計200MHz幅という広い帯域が確保されており、これを生かした超高速データ通信の実現が期待されている。他方、既存の帯域に比べ周波数が高いため、電波の到達距離が短く建物の陰などに回り込み難いなど、広域エリアのカバーには使い難いという「欠点」もある。

そこでKDDIは、こうした3.5GHz帯の特性を利用し、半径数十mから100m程度の狭いエリアをカバーする小セル基地局用に展開する考えだ。トラフィックが局所的に集中する都心のターミナル駅周辺などに高密度に配置し、急増するデータトラフィックに対処することを計画している。

さらに、3.5GHz帯の小セル基地局を、伝搬特性に優れ人口カバー率99%超のエリアを構築している800MHz帯のマクロ(大)セルのネットワークと組み合わせて展開することにより、大容量で高品質なLTE-Advancedネットワークを実現する。

実証実験で設置された3.5GHz帯の小セル基地局
実証実験で設置された3.5GHz帯の小セル基地局。基地局装置はサムスン製のピコセル基地局をベースに開発された

ただ、この構想を進める上では、1つネックがある。それは、3.5GHz帯の小セル基地局はカバーエリアが非常に小さいため、ユーザーが移動しながら通信を行うと小セル間、あるいは小セルとマクロセルとの間のハンドオーバーが頻繁に生じ、瞬断によるスループットの低下が懸念されることだ。今回、実証実験が披露されたC/U分離は、その解決策となる技術である。

U/C分離技術の概要
U/C分離技術の概要

C/U分離技術とは、端末と基地局の間でやり取りされるデータ信号をユーザーデータ(User Plane)と制御信号(Control Plane)に分けて扱い、制御信号(C)は常にマクロセル基地局と接続するようにするもの。

ユーザーデータ(U)は小セル基地局のエリア内では小セル基地局との間でやりとりされ、その小セル基地局のエリア外に出た場合は他の小セル基地局やマクロセル基地局にハンドオーバーされる。この場合も通信の要となる制御信号はマクロセル基地局と接続されたままであるため、ユーザーデータのハンドオーバーがスムーズに行われ、スループットの低下が抑えられる。

KDDI 技術統括本部 技術開発本部 標準化推進室 副室長の松永彰氏によると、「C/U分離技術は3GPPリリース12で標準仕様化が進められており、2014年9月に仕様が固まる見込み」だという。今回の実証実験は標準化に先駆けて、その評価を行うもので、KDDIは実験結果を3GPPでの仕様策定作業にフィードバックする。実用化の時期について松永氏は「商用化には通常、仕様の完成から2年ほどかかる」としており、2016年の3.5GHz帯の利用開始時点での導入を想定しているようだ。

実証実験は、小山ネットワークセンター内に1.5GHz帯のマクロセル基地局を2局、これらの基地局のカバーエリア内に計4局の3.5GHz帯小セル基地局を設置して実施されている。基地局の仕様は現行のLTEに準じたもので運用帯域幅は3.5GHz帯、1.5GHz帯ともに10MHz×2、最大通信速度は下り75Mbpsとなる。

3.5GHz帯にはTDD方式のLTE-Advancedの導入が有力視されているが、今回の実験ではFDD方式のシステムが用いられている。KDDI 技術統括本部 常勤顧問の渡辺文夫氏は、「実験にすぐに使えるシステムとしてFDD方式を利用した。機能検証上はTDD方式でもFDD方式でも問題はない」とする。

デモンストレーションでは、C/U分離に対応したものと非対応の2種類の端末を搭載した車両でネットワークセンター内を走行し、両者の通信状況が比較された。

それぞれの端末に同一のビデオコンテンツが流されたが、C/U分離非対応端末ではハンドオーバー時に画面が乱れた。それに対して、C/U分離対応端末では、マクロセル間のハンドオーバーの際を除き、安定した通信が可能であることが示された。

U/C分離技術の実証実験
C/U分離技術の実証実験で試験車両に設置された受信設備。「C/U分離設備あり」の装置では小セル間、小セルとマクロセル間でハンドオーバーしても動画コンテンツが乱れることなく視聴できる

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