総務省は2014年1月23日、第4世代移動通信システム(4G)での利用が想定されている新周波数帯3.4-3.6GHz帯の割当を希望する事業者への公開ヒアリングを開催した。総務省は2014年中に同帯域の割当を行う方針を打ち出しており、今回のヒアリングはその審査基準(基地局開設指針)の策定に向けたプロセスの1つである。
公開ヒアリングでは、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイル、イー・アクセスの4社の社長が、それぞれ3.4-3.6GHz帯の4G導入プランの説明と帯域割当方法についての提言を行った。
公開ヒアリングに臨む携帯4社のトップ。左からNTTドコモの加藤薫社長、イー・アクセスのエリック・ガン社長、KDDIの田中孝司社長、ソフトバンクモバイルの孫正義社長 |
40MHz幅があれば1Gbpsも可能
第4世代移動通信システムであるIMT-Advancedは、方式としては現行LTEの発展規格であるLTE-Advancedが世界的に主流となっており、今回ヒアリングに参加した4社もLTE-Advancedの導入を計画している。
ただ、LTEおよびLTE-Advancedには2つのバリエーションがある。携帯電話で広く使われているFDD(送受信に別の周波数を使う方式)と、WiMAXやAXGPと同じTDD(時分割により同一周波数で送受信を行う方式)の2つで、後者はTD-LTEと呼ばれるものだ。そこで、3.4G-3.6GHz帯にFDDとTDDのどちらのLTE-Advancedを導入するかが大きな焦点となっていたが、ヒアリングでは4社すべてがTDDの利用を希望し、大勢が固まった形となった。
TDD方式には、(1)事業者間でシステムの同期をとることでガードバンドを不要にでき、周波数を有効利用できる、(2)トラフィックの多い下り(端末の受信側)にリソースを多く割り振り、効率的なデータ通信ができる、(3)ペアバンドを必要としないため周波数の割当が容易にできるなどの利点がある。このため海外でも欧州を中心に、3.4G-3.6GHz帯にTDD仕様のLTE-Advancedを導入する動きが広がっている。
ドコモは従来、3.4G-3.6GHz帯にFDDを導入する意向を持っていたが、加藤薫社長は今回、「グローバルで共通した周波数を割当てやすい」という点を理由に、TDDを採用する方針を明確にした。そのうえで、「周波数の有効利用のためには、上下のフレーム構成比率を含めて各事業者が同期をとる必要がある。そのための合意形成プロセスが必須である」という考え方を示した。
また、3.4-3.6GHz帯の展開イメージだが、4社とも、都心などでのトラフィック対策を主目的にした導入を計画している。例えばドコモは、3.4GHz-3.6GHz帯の小セルと既存帯域のマクロセルをキャリアアグリゲーション(複数帯域を束ねて高速化を図る技術)で一体運用して安定した通信を実現する「アドオンセル」のコンセプトを改めて示した。また、KDDIの田中孝司社長は3.4-3.6GHz帯の小セルはデータ転送だけに利用し、制御信号は既存帯域のマクロセルで処理する「C/U分離技術」への取り組みをアピールした。ドコモとKDDIは、このサービスイメージを踏まえて、基地局開設指針の基準について、人口カバー率ではなく、基地局密度などのネットワーク容量(KDDIは「エリアの厚み」と表現)で評価することを強く求めた。
サービス開始時期については、端末の供給やシステムの導入準備に時間がかかることから、「2015年度末に運用開始、2016年度からサービスの提供をスタートする」としたドコモをはじめ、各社とも2016年を想定している。