近年、モバイルに積極的に注力しているSAP。それを象徴する動きとして挙げられるのが、2010年のSybase社の買収と2012年のSyclo社の買収である。両社ともモバイルアプリケーションのための基盤ソリューションを開発・提供してきた企業だが、SAPジャパンは2013年12月3日、モバイルアプリ開発プラットフォームの新版「SAP Mobile Platform 3.0」を発表。SybaseとSyclo、そして従来からSAPが提供していた3つのモバイルアプリ開発プラットフォームを遂に統合し、単一のプラットフォームになった。
統合は、「既存製品が持っていた優れた部分を吸収しながら、オープンな業界標準を採用する」という方向性で行われたと、IVE&ソリューション本部 テクノロジーエンジニアリング部 モバイルソリューションズ ディレクターの井口和弘氏は説明する。
SAP Mobile Platform 3.0の概要 |
使い慣れた開発ツールが使える「BYOT」を実現
具体的には、以下のスライドにある5つのオープンな業界標準を採用した。例えば、バックエンド接続のデータモデルにはOData(Open Data Protocol)を採用し、SAP以外とのシステムとも接続可能だ。さらに、OData以外のSOAPやJDBC、JPAなどと接続するためのゲートウェイ機能も提供するという。
5つのオープンな標準標準を採用 |
また、モバイルアプリを開発するためのフレームワークには、クロスプラットフォーム開発が可能なCordovaを採用。iOS、Android、Windows Phone 8といったマルチOSに対応しており、ネイティブアプリ/Webアプリ/ハイブリッドアプリを開発できる。
特徴的なのは、Cordovaに対応したサードパーティの開発ツール向けに、プラグインも用意していることだ。このプラグインを活用することにより、その開発者が使い慣れているサードパーティの開発環境でも、プッシュ通知やストレージの暗号化などのSAP Mobile Platformの各種機能を利用できる。井口氏は「BYOT(Bring Your Own Tool)を実現する」とアピールした。さらに、管理者向けの機能も強化され、アプリの実行状況や利用頻度などをグラフィカルに管理できるようにもなった。
SAP Mobile Platform 3.0の主な強化点 |
コンシューマ向けとエンタープライズ向けアプリを統合的に開発可能
SAP Mobile Platform 3.0には、コンシューマ向けのアプリ開発プラットフォームである「Sybase Money Mobiliser Platform」も統合されている。これにより、エンタープライズ向けとコンシューマ向けのアプリを統合的に開発可能なプラットフォームとなったが、SAPジャパンではこの強みを日本市場での営業戦略にも積極的に活用する方針だ。
「モバイルアプリの世界では、B2Cのビジネスが難しくなってきている。そこでSAPが橋渡しし、コンシューマ向けのアプリ開発者と連携してエンタープライズ系のビジネスの可能性を追求していきたい」(ビジネスソリューション統括本部 モバイルソリューション部長の溝上勝功氏)
SAPのモバイルアプリ開発プラットフォームの顧客数はグローバルで2500社以上。対して日本はまだ「40~50社」(井口氏)という現状だ。日本企業のモバイル活用は、諸外国と比べると遅れが目立つ状況になっているが、SAPジャパンはコンシューマ向けアプリ開発者の力も借りて開拓していく考えだ。