日本国内では、まだ欧米ほどにはWAN高速化装置が普及していない。その説明によく用いられるのが日本のブロードバンド事情の良さだ。しかし、「WANが広帯域であれば、WAN越しのアプリケーションを高速に利用できる」というのは“誤解”であることを前編では解説した。
WAN高速化装置が導入されていないWANのパフォーマンスは、導入済みのWANと比べて数分の1~100分の1に過ぎない。
ファイルサーバー上のPowerPointを開くのに数十秒待たされていたのが数秒に短縮された。遅すぎて使い物にならなかったWebアプリケーションがサクサク動くようになった。ディザスターリカバリー目的のバックアップに丸1日かかっていたのが1時間で完了するようになった……。
ビジネスのあらゆる局面でいまスピードが求められているが、WAN高速化装置はそこに劇的な変化をもたらす可能性がある。
とはいえ、現状はまだ「WAN高速化装置を導入するほど、WANのパフォーマンスに課題を抱えていない」と考えているIT部門の担当者が少なくないようだ。しかし、それは本当だろうか。
犠牲にされる地方・海外拠点の生産性
リバーベッドの寺前氏がユーザー企業と話していて、よく感じるのは次のことだという。
「IT製品の採用を決める方はたいてい本社に勤務している。だから、地方拠点にいる従業員が困っていることに気付かれていないケースが実は少なくない」
多くの企業はデータセンターを本社近くに置いているが、WAN越しのアプリケーションのパフォーマンスは遅延時間=通信相手までの距離に大きく依存する。つまり、WANの遅さに困っていないのは、データセンターから近い場所にいる本社従業員だけかもしれないのだ。
「地方支社に出張したとき、たまたまデータセンターにアクセスしてみたら『ファイル1個開くのに1分以上かかって驚いた』といった話はよく耳にする」(寺前氏)。日本企業の海外進出が再加速しているが、海外拠点の場合、事態はさらに深刻だ。
WANが原因で地方や海外にいる従業員の生産性が低下しているのに「我慢すればいい」という対応で、IT部門は自身の役割を果たしているといえるのか――。これが、WAN高速化装置に注目しなければならない2つめの理由だ。
図表1 WAN高速化装置で距離の壁を越えた体感速度を実現 |
リバーベッドは、PCにソフトウェアをインストールすることでオフィス外でもWAN高速化の効果を享受できる「Steelhead Mobile」(Windows/Mac対応)も用意している。出張中や小規模な海外拠点向けとして利用されるケースが多いという |
(出典:リバーベッドテクノロジー) |
各拠点の遅延時間はPingを使って簡単に調べられるが、リバーベッドではSteelheadの評価機を無償で貸し出し、どれくらいパフォーマンスが向上するかを可視化するサービスも提供している。
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