ソフトバンクは2025年8月21日、AIを活用してRAN(無線アクセスネットワーク)を高度化する「AI for RAN」の研究開発において、無線通信信号の処理に高性能AIモデル「Transformer」を活用したAIアーキテクチャーを新たに開発したと発表した。
Tranformerを活用することで、AIモデルの一種であるCNN(Convolutional Neural Network:畳み込みニューラルネットワーク)を用いる場合と比べ、上りスループットが8%向上。ベースライン方式と比較すると、約30%のスループット向上を達成した。また、平均約338µs(1µs=100万分の1秒)という超低遅延処理を実現し、CNNを利用した場合よりも処理速度が約26%高速化したという。
基地局が端末に最適な電波を割り当てるために必要な「サウンディング参照信号(SRS)予測」のシミュレーションでは、時速80kmで移動する端末の下りスループットがベースライン方式と比べて約29%、時速40kmで移動する端末においては約31%向上。AIモデルの高性能化により、スループットの改善率が2倍以上(これまでの研究では、時速80kmで移動する端末の下りスループットは約13%向上)になることが実証できたそうだ。
SRS予測におけるシミュレーション結果の比較
なお、同アーキテクチャーには、Transformerの機能の1つである「自己注意機構(Self-Attention)」を活用。無線信号が持つ周波数や時間などの相関関係(電波の反射や干渉による複雑な信号パターンなど)を把握することで、軽量化しながらも高いAI性能を維持することが可能だ。CNNの「畳み込み機構(Convolution)」が入力の一部だけを参照するのに対し、「自己注意機構(Self-Attention)」は入力全体の関連性を把握することができるという。