「knowledgeable Agents to design and perform Complex Tasks(複雑なタスクを設計し、実行する知識豊富なエージェント)」――。略して「ACT」というのが、NTTが新たに開発した「マルチエージェント」技術の名称だ。
マルチエージェントとは、あるタスクを複数のサブタスクに分割し、各エージェントが個別に処理した結果を統合して出力する手法のことだ。2025年8月1日に開催したオンライン記者説明会でACTについて解説したNTT人間情報研究所 デジタルツインコンピューティング研究プロジェクト 主任研究員の薮下浩子氏によれば、従来のマルチエージェントは「分業で遂行できる定型タスク」には対応できるものの、複雑なタスクの場合は、質の高い成果は期待できないという。
NTT人間情報研究所 デジタルツインコンピューティング研究プロジェクト 主任研究員の薮下浩子氏
理由は、各エージェントが、チームで解くタスクの全体増や他のエージェントのサブタスクの詳細や解決アプローチを把握できないことにあるという。したがって、そのアウトプットは、個別遂行されたものを単純結合する傾向が強く、サブタスク間の関係性や全体の一貫性を求めるようなタスクには適さない。
従来のAIエージェントの問題点
サブタスクの検討・遂行中にAIエージェントが「対話」
この課題を解決するためにACTが導入したのが、エージェント同士の対話だ。「人間と同様に対話を通じて他のエージェントとコミュニケーションを取り、チーム内でアウトプットのイメージをすり合わせながら協調してタスクに取り組む」(薮下氏)ことを特徴としている。
ACTの概要
さらに、タスク遂行中に新たな知識が必要となった場合には、その知識の専門家との対話をはさみ、自らの知識の補強も行う。これにより「複雑なタスクでも高品質な解を得られる」という。
これを実現するために、薮下氏ら開発チームが導入したのが次の2つだ。「人間のような『知識管理』と『協働創造スキーム』」である。