無線技術を活用してケーブルを介さずに電気を送るワイヤレス電力伝送(WPT:Wireless Power Transfer)は、すでにスマートフォンの充電器などで利用されており、電気自動車の非接触充電システムでの普及が期待されている。
これらのWPTシステムは磁界結合などの技術を使い、充電器に乗せたスマートフォンや、充電設備から10cm程離れた電気自動車の充電ポートに電気を送る「近接結合型」と呼ばれるものだ。その一方、近年、電気エネルギーを電波に変換して5mから10m程度の距離で電気を送る「空間伝送型」WPTシステムが実用化され、工場などで使われているセンサー類への電力供給などの用途で利用が始まっている。
2025年11月にパシフィコ横浜で開かれたマイクロウェーブ展(MWE2025)の(一社)ワイヤレス電力伝送実用化コンソーシアムのブースでは、空間伝送型をはじめとするWPTシステムの最新動向が紹介された。
特定小電力化で普及に弾みがつく920MHz帯WPT
空間伝送型WPTは2022年に制度化され、920MHz帯、2.4GHz帯、5.7GHz帯の3つの周波数帯の利用が認められている。近接結合型WPTが電子レンジと同様、高周波利用設備として無線局免許を受けずに利用できるのに対し、空間伝送型WPTは構内無線局の免許が必要で、2025年3月末時点で470局以上が運用されている(総務省発表)。その多くが920MHz帯を利用するものだ。
920MHz帯WPTシステムでは、最大1Wの送信出力で、数ミリW程度の小電力の給電が行える。産業用ロボットに搭載されるセンサー類や、介護現場で高齢者の状況を把握するために用いられるバイタルセンサーや位置センサー、ビル管理で使われる人感・環境センサーへの電源供給などで使われている。
送信出力が1Wと小さく、電波が人体に与える影響が軽微であることから、人のいる場所でも使える。また、電波が物陰に回り込みやすいこともメリットだ。
現在、空間伝送型WPTシステムの利用は屋内に限られているが、今年10月の情報通信審議会の答申を受けて2026年には920MHz帯WPTの屋外利用が可能になる見込みだ。
あわせて、出力を最大25mWに抑えることで特定小電力無線として利用も認められる。送れる電力は少ないものの、免許不要で手軽に利用できる特定小電力対応製品の登場で920MHz帯WPTの普及に弾みがつきそうだ。
コンソーシアムのブースでは、WPTの技術開発などを行うパナソニック システムネットワークス開発研究所のコーナーで特定小電力対応の空間伝送型WPTのプロトタイプの実機デモが公開されていた。















