測定器大手のアンリツは、「ワイヤレスジャパン×ワイヤレス・テクノロジー・パーク(WTP) 2025」において、幅広い無線測定ソリューションを展示した。なかでもバリエーション豊かだったのがミリ波帯向けの測定ソリューションである。
ミリ波(30GHz~300GHz)は、一般にはあまり意識されないが、実は生活のさまざまな場面に利用されている。波長が短く、物体の形状を高精度に捉えることができるうえ、直進性が高いため、ビームを狭く集中させやすい。こうした特性により、ミリ波はレーダー用途で広く活用が進む。
たとえば、自動車の衝突防止センサーやスマートフォンの顔認証、さらには通園バスの置き去り検知など、ミリ波レーダーの用途は拡大している。こうした普及を背景に、ミリ波帯の電波測定ニーズが急速に高まっており、担当者によれば、関連ソリューションの過去3年間のCAGR(年平均成長率)は40%を超えるそうだ。
シングルアナライザに外部ミキサーを接続 近距離でもミリ波を安定計測
ブースでは、ミリ波帯差動デバイスの精密な校正を可能にする「広帯域ベクトルネットワークアナライザME7838シリーズ」や、通過振幅特性を簡便に評価できる「スカラネットワーク測定システム」など、ミリ波帯関連で計5項目を展示。その中でも注目を集めていたのが、「外部ミキサを用いたミリ波スペクトラム測定ソリューション」だ。
これは、シグナルアナライザ「MS2830A/MS2840A/MS2850A」と外部ミキサーを組み合わせることで、近傍界における測定の難しさを克服するもの。通常、測定対象とアナライザの距離が近すぎると信号が飽和するリスクがある一方、遠ざけると測定精度が低下するという課題があるという。
シグナルアナライザ「MS2840A」に外部ミキサーを接続しミリ波センサーの測定を行った
ブースのデモでは、MS2840AにEravant社製のミキサーを接続し、さらにミキサーにはキャンドックスシステムズ製のアンテナプローブを接続。ホシデン製のミリ波センサーを対象に測定を行った。近距離での測定にもかかわらず、高精度なスペクトラム測定が可能で、プローブを動かしても結果にほとんど影響がなかった。今後、ミリ波の測定をより簡便かつ安定して行う手段としての活用が期待される。
高い安定性を誇る小型直流電源 電動モビリティで採用増
一方で、ユニークな展示として来場者の目を引いていたのが、グループ会社・高砂製作所による直流電源だ。同社は、実験・評価・開発用途に向けた小~中容量の直流電源「LX-2」「KX-S」「ZX-S」などを展開しており、今回はワイヤレス給電装置と連携してミニ四駆を走行させるデモを実施。特筆すべきは電源の高い安定性で、デモ中も出力値はほぼ一定に保たれていた。この性能が評価され、電動モビリティの試験用途などでの採用も進んでいるとのことだ。
小型直流電源とワイヤレス充電機を接続しミニ四駆を走行させるデモを実施
このほか、5Gフィールドテスタや5G RedCap対応ソリューション、6GHz帯対応のWi-Fi測定ソリューションなど、全11項目を展示。次世代通信を支える「測定」の進化を体感してほしい。