シスコシステムズが実施したAI成熟度指標によると、充分に成熟し、AIの潜在力を十分に活用できる体制が整っていると回答した企業は13%に過ぎない。日本企業に限れば、わずか4%だ。AIに必要なインフラの整備が「遅れている」と回答した企業は73%にも上る。AIエージェントの悪用による情報漏洩のリスクを懸念する声も上がっている。
企業がAIを活用するには、言語モデルの作成や選択に始まり、自社のデータに合わせた最適化やRAG(検索拡張生成)等の過程を経て、最終的に推論環境で活用するといったステップを踏む必要がある。その道のりは業種や企業、さらには同じ企業内でも部署によって異なる。しかも、IT部門だけではなく、事業部門を含め多くのステークホルダーが関わるため、多様なニーズに応えるための調整も必要だ。単に性能さえ出ればよいわけではなく、消費電力やスペースにも配慮する必要がある。
「AIは非常に複雑なもので、自動車を走らせながら道路を再設計していくようなものです」と、その難しさを指摘するのは、シスコシステムズ クラウド・AIインフラストラクチャ事業 事業部長の鈴木康太氏だ。急速な技術革新もあって、AI導入のプレイブック、つまり、誰でも自信を持って進められる“定石”が存在していないことも、その道のりを困難なものにしている。
シスコシステムズ クラウド・AIインフラストラクチャ事業 事業部長 鈴木康太氏
学習から最適化/RAG、推論まで実績十分なポートフォリオでカバー
道標のない中でAI導入を進めていくには何が必要か。不可欠な要素として同氏が挙げるのが次の5つ。AIモデルとそれを支えるコンピュート、データ、ネットワーキング、セキュリティである。これらを揃えるにあたっては、自社のニーズに合う「最適な選択肢」を選び、サードパーティ製品も含めて確実に動作することが確認された「信頼性」が確立していること。そして、煩雑な作業なしに容易に導入・運用できる「シンプルさ」という3条件を兼ね備えることがポイントとなる。
シスコが提供するAIインフラは、この3つをどのように実現しているのか。
まず、AIが注目される前から実績を積んできたデータセンタースイッチ「Cisco Nexusシリーズ」や独自開発ASIC「Cisco Silicon One」、そして「Cisco Unified Computing System(UCS)」等の幅広い製品群がある。そのラインナップの中から、ユーザーは自社のAI戦略に合ったものを選び、組み合わせることができる。「AIモデルの作成、最適化、活用という各フェーズを単一のポートフォリオではカバーできません。学習の際には大量のGPUを搭載したインフラが必要ですが、モデルの最適化やチューニング、推論環境ならばCPUやGPUの組み合わせでもいいかもしれません。また、将来的な拡張性も担保する必要があります」(鈴木氏)
様々なニーズに合わせて、NVIDIA HGX/MGXプラットフォームを活用した高密度GPUサーバーはもちろん、モデルの最適化やRAG向けには、コンピュートとネットワーキングを統合したフルスタック型のサーバーを提供。そのほか、推論環境に最適なエッジAIプラットフォームの提供も予定している。