SPECIAL TOPIC衛星通信×LPWAでIoTの可能性を開拓 洋上・山間部でもリアルタイムデータ取得

技術力に定評あるエイビットが開発した「Extreme IoT」は、衛星通信・イリジウムとLPWAを組み合わせ、過酷な環境でも安定したIoT運用を実現するソリューションだ。低消費電力設計により独立電源で長期稼働し、防災・インフラ監視から海洋モニタリングまで幅広い用途に対応。IoTの新たな可能性を切り拓く。

半導体設計からデバイス開発、ネットワーク構築まで、通信ソリューションをワンストップで提供するエイビット。そのなかでも、LPWAを活用したIoTには長く取り組んできた実績がある。

LPWAの1つにLoRaWANがあるが、エイビットはその普及に中心的な役割を果たしてきた。モジュール、ゲートウェイ、センサーなど多くの機器を自社開発するだけでなく、業界団体・LoRa Allianceの日本初のコントリビューターとして日本国内での規格策定に深く関与している。

LTE不感地帯にこそIoTニーズ 内水氾濫対策で浮き彫りに

その知見を生かして取り組んでいる新規事業の1つが、「Extreme IoT」だ。

Extreme IoTは、洋上や山間地など、過酷な環境でのIoT運用を実現するサービスである。衛星通信と独立電源駆動により、LTEの不感地帯や電源確保が困難な場所でも、リアルタイムのデータ取得を可能にする。

エイビット 新規事業戦略室 室長の都竹章浩氏によれば、Extreme IoTを開発する大きなきっかけとなったのが、佐賀県での内水監視の取り組みだったという。

エイビット 新規事業戦略室 室長 都竹章浩氏

エイビット 新規事業戦略室 室長 都竹章浩氏

近年の気候変動により、都市部でも浸水被害が全国各地で相次いでいる。こうした浸水は、大量の雨水が下水道に流れ込み、マンホールからあふれ出る内水氾濫によって発生することが多い。佐賀県は近年相次いで内水氾濫による浸水に見舞われ、その対策が急務だった。

そこで佐賀県とエイビットは協働し、水位計とクラウドによる監視システムを構築。県全域約320箇所にエイビット製の超音波センサー式水位計を設置し、2022年11月から運用している。

市街地の浸水を監視するため、水位計は道路やアンダーパスなどに重点的に配備されたが、氾濫を起こしやすい用水路やため池にも設置された。ここで問題になったのが、電波不感地帯だ。水位計はLTEでデータを送信するため市街地では問題なく通信できるが、「ため池は住宅街の外なので、LTEがぎりぎり届かない場所があります」(都竹氏)。その不感地帯を、エイビットが得意とするLoRaでカバーし、各市町村が指定する内水監視ポイントを網羅することができた。佐賀県とエイビットはIoT運用をさらに効果的にするため、取得したデータの利活用にも継続的に取り組んでいる。

都竹氏はこの経験から、LTEには広大な不感地帯が存在していることを再認識したという。日本の国土におけるLTEの面積カバー率は約60%。人口カバー率が99%を超えて久しい一方、国土における山地や離島の多さという地理的要因によって、基地局設置は頭打ちとなっている。

「LTEの不感地帯にこそ、IoTのニーズがあります」。こう力を込める都竹氏は、その例として道路や線路などのインフラ維持、建設現場、防災対策、洋上監視などを挙げる。そして、こうした用途をターゲットに商品化したのが、衛星通信とLPWAを組み合わせたExtreme IoTだ。

RELATED ARTICLE関連記事

SPECIAL TOPICスペシャルトピック

スペシャルトピック一覧

NEW ARTICLES新着記事

記事一覧

FEATURE特集

WHITE PAPERホワイトペーパー

ホワイトペーパー一覧
×
無料会員登録

無料会員登録をすると、本サイトのすべての記事を閲覧いただけます。
また、最新記事やイベント・セミナーの情報など、ビジネスに役立つ情報を掲載したメールマガジンをお届けいたします。