<特集>ネットワーク未来予想図2025AIロボット時代もたらす「ロボット基盤モデル」 日本のラストチャンスに

2025年、生成AI関連の最注目キーワードの1つは「ロボット基盤モデル」だ。AIで遅れを取る一方、従来型のロボット産業をリードしてきた日本にとって、ラストチャンスの年になるかもしれない。

「ロボットは世界で最も重要な産業の1つになるだろう」

エヌビディア創業者兼CEOのジェンスン・フアン氏は11月13日、都内で開催したイベント「NVIDIA AI Summit Japan」でこう予言した。

理由は明快だ。AIがロボティクスに革命をもたらす未来がくっきり見えてきたからである。

「NVIDIA AI Summit Japan」に登壇したエヌビディア CEOのジェンスン・フアン氏とソフトバンクグループ 会長兼社長の孫正義氏

「NVIDIA AI Summit Japan」に登壇したエヌビディア CEOのジェンスン・フアン氏とソフトバンクグループ 会長兼社長の孫正義氏。「AIロボットに情熱を持っている」と孫氏も語った。右はNVIDIA AI Summit Japanでも話題の中心の1つとなったGR00Tの紹介ビデオの1シーンだ

2022年に世界を驚かせた大規模言語モデル(LLM)は、その後マルチモーダル化が進み、映像や音声なども扱えるように発展した。今その次のステップとして本格化しているのが、ロボット基盤モデルの開発競争である。

動作に関する大量かつ多様なデータも学習させることにより、高度な自律的動作や、汎用的なタスクの実行をロボットで可能にする。

「ロボット産業は長い間、横ばいで推移してきたが、その理由は従来のロボットは特殊過ぎ、異なるシナリオや条件、作業に適用できる柔軟性に欠けることにあった」(フアン氏)

しかしAIが、これまであった“限界”からロボットを解き放つ。

2024年10月、創業まもない米国のスタートアップ企業であるPhysical Intelligence社は洗濯機から洗濯物を取り出して畳むことなどができるロボットの動画を同社のブログで公開し、大きな話題を呼んだ。

洗濯物を畳むPhysical Intelligence社のAIロボット(出典:同社Webサイト)

洗濯物を畳むPhysical Intelligence社のAIロボット(出典:同社Webサイト)

柔らかく、形が一定ではない衣服を正確に認識し、適切な力加減で適切な形状に畳むという作業は、ロボットには難易度が高いとされてきた。

Google DeepMindの「RT-2-X」をはじめ、ビッグテックもロボット基盤モデルに力を注ぐ。エヌビディアは2024年3月、ヒューマノイド用の基盤モデル「Project GR00T」を発表した。

生成AIの急速な進化の背景には、モデルを大規模化すると性能も向上するスケーリング則の発見があるが、ロボットの動作についてもスケーリング則は成り立つことが明らかになってきている。

大規模基盤モデルは、すでに人間同等、あるいは人間以上のクオリティのテキストや映像などを生成可能だが、身体性を伴った行動・作業についても同様に、人間に並び、超えていく未来が拓かれようとしているのだ。

三菱総合研究所(MRI)によると、グローバルで現在約10兆円のロボット産業の市場規模は、一定の前提に基づき推計すると2040年には約60兆円に達する見通しである(図表1)。

図表1 AI・ロボティクス市場規模は世界で60兆円へ

図表1 AI・ロボティクス市場規模は世界で60兆円へ

「日本の市場は、1兆円から4兆円へと成長する見込みだ。この推計には自動車の自動運転などは含めていないため、関連する周辺産業を含めると、さらに巨大な産業となることが期待される」とMRI 先進技術センター 研究員の大山みづほ氏は、「未来社会を支えるAI・ロボティクス」をテーマに11月28日に開催された「三菱総研グループフォーラム2024」で述べた。

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