国内PBX市場が海外ベンダーに攻略される日は結局のところ来なかった。しかし、その発展系といえるユニファイドコミュニケーション(UC)市場では違う結末が待っているかもしれない。
シスコやマイクロソフトといった海外ベンダーの方が、統合度などにおいて一歩も二歩も現時点では先行しているからだが、また1つ大手海外ベンダーから新たなUCソリューションが登場した。日本アルカテル・ルーセントが2011年11月から販売を開始した「OpenTouch Business Edition」(以下、OpenTouch)である。
「これまで我々は日本市場で非常に苦戦してきたが、OpenTouchは競合他社よりもずっと優れたソリューションだと確信している」。アルカテル・ルーセント本社バイスプレジデントのザビエル・マーティン氏はこう語るが、実際、UCの最先端トレンドをしっかり押さえた、なかなか興味深い中堅・中小企業向け製品となっているのだ。
アルカテル・ルーセント コミュニケーションソリューションズ プロダクトマーケティング担当バイスプレジデント ザビエル・マーティン氏 |
“会話”を変える3つの技術
企業ITの世界では今、「ITコンシューマライゼーション」が大きな潮流となっている。iPhoneやソーシャルメディアなど、進化の著しいコンシューマ向けテクノロジーをいかにうまく取り入れていくかが、企業の競争力を左右し始めているわけだが、コンシューマと比べて遅れが目立つ分野の1つに、旧来の電話やメールを中心とした企業コミュニケーションがある。そこでアルカテル・ルーセントが掲げているのが「Change the Conversation」というコンセプトだ。マーティン氏によると、OpenTouchは次の3つの中核技術により、「ビジネスにおける“会話”に変革をもたらす」という。
まずはマルチパーティ、つまり会議機能の標準搭載である。例えば顧客との1対1での会話中に必要な知識を持った別のメンバーを新しく参加させるなど、セッションを切断したりツールを切り替えることなく、メンバーの追加/離脱を行うことなどが可能だ(図表)。
図表 マルチパーティ機能のイメージ |
次はマルチメディアである。自社やサードパーティの別製品との連携に頼るのではなく、音声、ビデオ、テキストチャット、資料共有などの機能をオールインワンで備えている。テキストチャットや音声から始めた会話を、シームレスにビデオや資料共有などに発展させることなども可能だ。もちろん複数人でのビデオ会議などにも対応する。
そして最後はマルチデバイスである。単に様々なデバイスでコミュニケーションできるだけではなく、外出中にスマートフォンで受けた会話を、オフィスに着いたのでセッションを切らずにPCのソフトフォンや固定電話機に転送するといったことも行える。現在サポートしているスマートフォンはBlackBerryとSymbianで、2012年前半にiPhoneとAndroidに対応する予定だという。
スマートフォンライクの操作性を取り入れた固定フォン「OmniTouch 8082 My IC Phone」をデバイスとして用意しているのも特徴の1つである。My IC Phoneではタッチパネルによる直感的操作が可能だが、マーティン氏がもう1つ強調する点はWebアプリケーションとの組み合わせにより、様々な応用が可能なこと。例えばMy IC Phoneからエアコンの設定やルームサービスの注文などが行えるホテルの客室向けアプリケーション等、アルカテル・ルーセントでは今後、業種向けソリューションも揃えていく考えだ。APIはオープンになっており、ユーザー企業やSIerが独自にカスタムアプリケーションを開発することもできる。
タッチパネル液晶搭載の固定フォン「My IC Phone」。PCやスマートフォンでも同様の直感的インターフェースを採用する |